伝統と革新

妙心寺退蔵院の松山副住職の講演で、『伝統と革新』について素晴らしい話をお聞きしたのでご紹介する。
 
「伝統とは変わらないもの、変えてはいけないものである。しかし、企業の継続には変化や革新が必要だ」と話された。「伝統と革新は相反する概念」だが、この概念について、400年前の禅僧の沢庵和尚が話された「不動智(不動心)」という言葉を紹介された。
 
例えば、あなたが川でボートを漕いでいる。
私が橋の上からあなたに向かって「動くな」と言ったとします。
そうすると、そこには2つ理解があります。
1つ目は文字通り、何もしない、動かないという理解です。
もう1つの理解は、川の中のその場所から動くなという理解です。
 
私が言っているのは2つ目の理解であります。
伝統とは自分の立ち位置を変えないということであり、
何もしなくてよいという意味ではありません。
今、時代は非常に早く流れています。何もしなければ簡単に流されてしまいます。
自分の立ち位置を見失わないためには、とらわれず臨機応変に動き続けなければならない。伝統と革新は首尾一貫しております。」
 
この言葉は『妙心寺退蔵院方丈襖絵プロジェクト』に通じていると思う。
約400年前に書かれた如拙の傑作国宝「瓢鮎図(ひょうねんず)」や狩野了慶が描いた襖絵に対して、現代のアーティストが400年後に作品を残すというテーマを持って、1986年生まれの村林由貴さんに襖絵製作を任せたのだ。
妙心寺退蔵院という“伝統”のなかに、現代アーティストの作品を掲げる“革新”を成し遂げられている。
 
「観光の魅力」も、伝統と革新の織りなす綾のなかに存在するのではないかと思う。
日本の自然は、放置した自然の美ではない。里山のように人の手が加えられた美である。観光地を昔のまま残すという意見もよく聞くが、より進化させないと魅力は徐々に減退するのだと思う。
 
来週、『妙心寺退蔵院方丈襖絵プロジェクト』の公開ツアーに参加する。
18ヶ月におよぶ作品の成果に出会い、村林由貴さんと言う人間の成長に出会い、新しい歴史の一ページの誕生に出会うと思うだけでワクワクしてくる。
 
http://painting.taizoin.com