爆買いはいつまで続くか 〜500万人市場になった中国インバウンド大盛況の舞台裏〜 

爆買いはいつまで続くか 〜500万人市場になった中国インバウンド大盛況の舞台裏〜

(やまとごころインバウンドセミナー 11月30日)
http://www.yamatogokoro.jp/report/2015/report_19.html


中国インバウンドが始まって15年が経つという。
今の中国客は、上海などの沿海都市部から来る個人客と、いま始まったばかりの内陸都市発の団体客に分けられる。
10年遅れのタイムラグをはらみながら同時に進化する過程にあるようだ。
しかし7万円のツアー費用は安すぎる。
「爆買い」のキックバックで補填された訪日ツアーのビジネスモデルは、いずれ崩壊するかもしれない。


【ポイント】
2015 年1~10 月の訪日外国人数(推計値)は1631 万人。中国本土客は前年比2倍増の428万3700人。年間で500万人規模の市場。
中国客激増の背景に成田・鄭州便のような内陸都市と日本を結ぶ定期便の大幅な拡充がある。
中国からの定期路線が国内最多となる関西国際空港では、11月現在、約40都市からの定期便がある。
河南省の人口は9406万人で、2014年の省内GDPは3兆4939億元(約70兆円)。台湾やタイなどアセアン諸国をすでに上回っている。1人当たりのGDPも1万ドル前後と中進国の水準だ。 

7~9月の訪日中国客の旅行消費額は4660億円(46.6%)を占め、1人当たりの平均消費額も28万788円とトップ。「爆買い」ぶりが裏付けられている。
中国客激増の背景は「円安」がある。
中国都市部のスターバックスのカフェラテが27元(540円)と日中の物価が逆転したことが大きい。

上海の観光施設の入場料を東京の類似した施設と比べた。 ※すべて大人一般料金(2015年11月現在)
上海動物園 800円(40元)―上野動物園 600円
上海水族館 3200円(160元)―すみだ水族館 2050円
東宝明珠塔 3200円(160元)―東京タワー 1600円
環球金融中心(通称「上海ヒルズ」)展望台 3600円(180元)―東京スカイツリー 3090円(2060円(展望デッキ当日入場券)+1030円(展望回廊))

中国社会で経済力を有する層は、日本よりコスト高の消費生活を送っている。
日本は何でも安い国だと感じられる。この機に日本に行かない手はない。そう考えるのは無理もないのだ。
ショッピングモールを訪れた中国客が口々に「ニッポンヤスイネ(日本便宜)」と声を上げる。

中国発クルーズ客船の博多港初寄航は2007年。主な出航地は上海と天津で、今年は264回(11月1日現在 中国発以外も含む)
中国ではクルーズ旅行の人気の理由
①4泊5日の標準的なクルーズ料金が空路のツアーより安い。
②船内の食事や遊興施設の利用は無料で、家族でのんびり過ごせる。
③買い物による持ち込みが無制限なこと。
血縁を大切にし、経済合理性に富み、買い物好き、ギャンブル好きという中国人の特性に驚くほどマッチしている。

今年中国客が激増した理由
①円安の定着
②中国からの航空路線の拡充とクルーズ客船寄港の増加
③中国人に対する観光ビザ発給要件の緩和
ポイントは「一定の経済力を有する過去3年以内に日本への短期滞在での渡航歴がある者とその家族」に対する個人観光数次ビザの発給要件の緩和である。

中国人の個人旅行客は、オンライン旅行社で航空便やホテルを手配し、日本でのスケジュールを事前にほとんど決めず、『孤独星球 东京到京都』(世界的なガイドブックシリーズ『Lonely Planet』の中国語版 ゴールデンルート編)を機内で目を通しながら日本滞在中の予定を考えるという。
「AKB48劇場に行きたい」など、目的を持って日本を自由に旅する個人客である。中国では「自助游(個人旅行)」という。
情報源はネット上の口コミで、旅行「攻略」サイトや微信(We Chat)などのSNSの利用が定着している。
訪日市場の伸びは前年比で7倍増。上海市場では旅客の半分、北京で30%をオンライン旅行社が占めるという。

現地の旅行関係者が口を揃えて挙げるのが、訪日ツアーのショッピングに過度に依存したビジネスモデルである。
5泊6日の日本ツアー(航空運賃、交通費、宿泊費、食事すべて込み)の料金がわずか3500元(7万円)にすぎないのか。それは日本国内でのバスやホテル、ガイドなどにかかる費用が特定の免税店などのショッピング施設からの売上に応じたキックバックで補填されているからだ。
上海発日本行きの標準的なクルーズ料金は、昨年4泊5日で約5000元(10万円)だったが、今年は半分以下の2000元代に下がっているという。

国内外のメディアから中国経済の減速で海外旅行市場の活況もそんなに長くは続かないのではないかと指摘する声も出てきた。
「爆買い」減少 →ツアー代金の上昇 →ツアー客の減少(市場の縮小)

来年は今年ような飛躍的な伸びを続けるのは厳しいものの、中国インバウンドの勢いは続くと考えている。
「爆買い」もすぐになくなるとは思えない。いまや中国人の「爆買い」は、単に訪日客のお土産購入シーンに見られるだけのものではなく、中国国内での日本商品のネット販売の領域にまで広がっている。
マクロ的にみれば中国経済は減速しているようだが、年間500万人程度の訪日客は、総人口からみると0.4%にも満たない。
中国の航空市場は、この秋以降、欧州や北米路線が減少する一方、アジア太平洋路線は増加を見せている。
一度バブルの味を知った国民はすぐにはその味を忘れられない。遠くには行けないので近場を目指す。恰好の旅行先のひとつが日本であることは間違いなさそうだ。