インバウンド狙いだけでは観光立国にはなれない!(星野佳路)

インバウンド狙いだけでは観光立国にはなれない
(ダイヤモンドオンライン 12月21日)
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星野佳路氏や観光庁が「休日分散」を働きかけているが、私にはピンとこない。
観光産業を見れば「休日分散」が望ましいのはわかるし、旅行しやすいだろう。しかし産業全体の構造を見ると休日分散は困難だ。
それなら有給休暇の利用促進の方が現実的ではないか。
そして、インバウンド観光を微々たるものとみる見方も違う。
急激なインバウンドの増加は弊害も生むが、
これまで観光地と思われていなかった日本が観光地として素晴らしいと気付いたら、世界中から人が押し寄せてくるのは当然だ。
宿泊施設などがオーバーフローを起こすのも対処療法にならざるを得ない。
私は神風ともいえるインバウンドの現状を、いかに持続させることができるかを考える方が優先順位が高いと思う。


【ポイント】
日本の観光政策は、今、訪日観光客の増加や爆買いに軸足がぶらされているのではないか。
「観光立国」の真の趣旨は、観光を軸として地方に新たな経済基盤をつくり、地方創生のエンジンとすることであったはずだ。
しかし、インバウンドの増加そのものが目標にすり替わってしまったかのような政府や報道に違和感を覚える。
観光産業は、地方と共にあり、地方と共に持続するにはどうすればよいかを考え続けている。雇用を生み出し、人々の自立を支え、経済に貢献し、結果として地方文化の持続と成長の基盤になる。それが「観光立国」の本来の趣旨だ。

日本の観光産業の付加価値誘発効果(総需要)は約24兆円で名目GDPの5.0%を占めている。
自動車、建設、機械、電機、金融に次ぐ5番目に大きな産業だ。
一方、訪日観光客の旅行消費額は2兆円ほどで、観光総需要からすれば微々たるもの。
日本の観光産業は、9割を超える国内旅行市場で支えられているという厳然とした事実がある。

国内宿泊旅行の実施率は、2005年比9ポイント低下し、58%程度になった。特に20~34歳の男性の実施率は51.3%という低さだ。
日本人の出国者数も年間1600万人で打ち止まっている。

「休日を分散すべきだ」と10年以上も前から主張してきた。北海道から九州まで地区別に少しずつずらして連休を実施する。
フランスやドイツなどはすでに実施している。
フランスでは、国内全地域の3学区に分けて、春休みなどを2週間ずつずらしている。また地域別の休業時期は毎年入れ替わり変動する。

「1年間のうち、100日が黒字、250日は赤字」。これが日本の旅館・ホテル業の宿命的な経営構造である。
GWやSW、年末年始はどっと稼ぐ。しかし連休が終われば閑古鳥が鳴いている。
観光産業で働く人の75%が非正規雇用であるのも、この構造あってのものだ。250日も赤字で運営しなければならない商売で、正規雇用を増やすことができない。

国内の観光事業者は「首都圏からのお客さまにいかに来てもらうか」に専念している。
休日が分散されれば、「九州の人に来てもらうには」「北海道の人に来てもらうには」と考え始める。

観光事業者にとって最大の使命は、「泊まってもらえる理由をつくること」。
休日分散のように需要が平準化されれば競争環境はできてくる。
競争力のある事業者を育てられれば、地方創生という大きな目標に向かって人の雇用も守れるようになる。
政策には、経営を守るのではなく、産業を守るという視点が重要だ。