何のためにインバウンドに取り組むのですか?

先日、近畿経済産業局の「第4回産業観光ネットワーク交流会」で、田辺市熊野ツーリズムビューローの多田稔子会長のお話をお聞きした。
ポイントは「何のためにインバウンドに取り組むのか?」のように私には聞こえた。
(文責:星乃)
【ポイント】
2004年、熊野古道が世界文化遺産として登録されて観光客が殺到した。
当初、世界遺産に登録されると観光客がたくさん訪れて、地元も潤うと期待していたが、世界遺産登録後に殺到した観光客は、1日に観光バス100台が押し寄せ、熊野古道は1時間も歩いただけで、次の観光地へと移動していった。
観光客にとって熊野古道は、ただの山道でしかなく、道が荒らされただけにしか過ぎなかった。
観光客も不満だったかもしれないが、地元民にとっても大きなストレスになった。
地元民は、「熊野をもっとゆっくりと味わってもらいたい」「熊野の本来の良さを感じてもらいたい」との意識を強くした。
そこから「目的意識を持って旅する人たちに熊野の良さを伝えたい」との意識が醸成された。
熊野を旅する目的は「巡礼」の心、ただの山道を歩くところにあるのではない。
これらの目的意識を持って来ていただけるのは、「欧米豪の個人旅行客」としてターゲット設定した。
外国人を呼び込むには外国人の感性が必要として、カナダ人のブラッド・トウルを採用した。
宿泊施設など地域の事業者を巻き込んだワークショップを延60回開催した。
そしてプロモーションを開始し認知も上がってきたが、「行きたいけどどうやって行けばよいのか」「旅程をどのように組めばよいのか」「英語が通じない」などのクレームが生じた。
認知度は上がったが、観光客を運ぶ足がなかった
このような経緯から平成22年に着地型旅行会社「熊野トラベル」(第2種)を設立した。とうより作らざるを得なかった…
宿泊客の予約から決済、旅行案内と多忙を極めたが、多忙な割にそのリターンは少なかった
・個人旅行対応(FIT)
・旅行手配のワンストップ化 (宿やガイド手配だけでなく、バスなどの交通手段などにも対応が必要)
・市域を超えた案内サービス(熊野古道は3県にまたがる)
・着地の情報ネットの構築
これまで経験することのなかった対応が求められることとなった。
地域にとって利点も大きかった。
・雇用が確保できる
・手数料が地元に残る(エージェントに持って行かれない)
・旅行者が喜ぶだけでなく、地元の人が喜ぶ
仕組みを作ることができた。
平成26年度の旅行業務取扱状況は、日本人3118人、外国人3569人と外国人の方が多くなり、売上は1億4556万円になった。
(平成27年の売り上げは1億8500万円)
田辺駅前の観光案内所は外国人利用者が27.8%にのぼる。
地域限定通訳案内士(和歌山県)として100名が登録している。
外国人の受け入れの最大の課題は「決済」。キャンセルへの対応、クレジット対応、外国貨幣対応などの問題がある。
田辺市熊野ツーリズムビューローでは、先にクレジット決済で予約を取り、旅館などへ支払う体制をとっている。

トークセッション「何故、外国人を呼ぶのか?」
京丹後市と兵庫県家島の事例報告の後、トークセッションで多田さんから「何故、外国人を呼ぶのですか?」との質問が出た。
観光客の減少から、インバウンドを呼びたいとのことであったが、
「何故、外国人なのか?」明確なビジョンがないと成果を得るのは難しいのではとの指摘だった。
巡礼の道「熊野古道」を感じてもらえるためには外国人を呼び込むしかなかった。これが明確なビジョンとターゲットとなった。
外国人が旅行先に「日本」を選ぶ明確な理由、そして土地ごとの「ほどよいキャパ」を見据える話にも含蓄があった。
【田辺市熊野ツーリズムビューローとは】HPから
http://www.tb-kumano.jp/about/

田辺市熊野ツーリズムビューローは、平成17年の田辺市の合併に伴い、翌18年4月、田辺市内の観光協会(田辺・龍神・大塔・中辺路町・熊野本宮)を構成団体として設立した、官民共同の観光プロモーション団体です。
平成22年の5月まで(約4年間)は、主に国内外に向けた情報発信と、受入地のレベルアップに関する事業を中心に取り組んでまいりました。

情報発信(プロモーション)事業
国内への情報発信はもちろんのこと、「世界に開かれた質の高い持続可能な観光地」を目指して、ホームページやパンフレット等の多言語化、海外のメディアや旅行会社に対する現地案内など、海外への情報発信にも積極的に取り組んできました。

受入地のレベルアップ事業
当地域におけるお客様の受入環境整備にも注力し、各地で体験型講座(ワークショップ)を開催したり、簡単な日常会話(英語・日本語)の指さしツールの作成なども行ってきました。