「YouTube」有料版のリスクと勝算 〜次の10年へ新たな賭け〜

「YouTube」有料版のリスクと勝算 〜次の10年へ新たな賭け〜

(日経ビジネスオンライン 7月13日)
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/278209/071200059/?n_cid=nbpnbo_ml&rt=nocnt
「ユーチューブ」が、今年中にも日本や欧州などで有料サービスを始めるという。
「FREE」フリー〈無料〉からお金を生みだす新戦略という本が2009年に販売された。そしてコンテンツがどんどんフリーになった。
ユーザーにとってフリーほどありがたいものはない。しかし間違いなくコストが発生しており、広告収入がその費用を埋める構造に慣れ親しんだ。
ユーザーの魅力や利便性を追求した有料の「ユーチューブ」が世に出て、本当に受け入れられるのか…
日本の「ユーチューブ」利用者は4297万人(国内・ユニークビューワー数)だという。
【ポイント】
ユーチューブは、76の言語、世界88カ国を超す地域に配信する。今や全世界で10億人以上が視聴する世界最大の動画配信プラットフォームだ。
グーグルの傘下に入って10年がたつ。無料という強みを生かし利用者を増やし続けてきたユーチューブは、有料サービスを世界で開始する。
「過去3年間、ユーチューブの視聴時間は年50%以上の成長を続けている。次に考えることは、新たな10億人ユーザーの獲得だ」という。
ユーチューブの歴史は、グーグルによる2006年の買収だ。知名度が低かったベンチャー企業へ約1800億円を投じることに、当時は「高い買い物」との批判が多かった。そんな声を尻目に、ユーチューブはグーグルの資金支援を受けながら規模を拡大し続けた。
2012年から、一定の再生回数を超える動画を投稿した人なら誰でも広告収入の一部を受け取れるルールを改めた。この変更で、動画投稿者が爆発的に増えた。
若者を中心としたテレビ離れ。企業にとって、テレビ広告に比べ安価でターゲットを絞った広告が打てるメリットがあるユーチューブやフェイスブックなどの動画広告の出稿を増やす動きが広がった。
ユーチューブには現在、400時間以上に相当する動画が毎分アップロードされている。動画が爆発的に増えたことでガイドラインに沿わない動画コンテンツの削除なりの管理が負担になっている。
ユーチューブは広告収入を主な収益源としているが、動画投稿者への収益分配など支出も大きい。売上高や利益などの財務情報を明らかにしていないが、今も業績面では苦戦しているようだ。
 
昨年10月、米国で先行して有料サービス「YouTube Red(ユーチューブレッド)」を始めた。月額9.99ドル(日本円で約1100円)。
広告を非表示にできるほか、スマートフォンやタブレットに事前に動画を一時保存して、オフライン状態でも動画を視聴できる。
若年ユーザーから要望の多かった「バックグラウンド再生」にも対応した。動画の音楽を聞きながら、メールやブラウザーの閲覧などができる。
 
ユーチューブの利用者は10億人いても、大半は無料サービスに慣れている。そのうちの何%が有料サービスに移行するかは未知数だ。
一定額の料金を支払えばいつでも好きな時にコンテンツを視聴できるビデオ・オン・デマンド(VOD)市場は競合がひしめいている。
ユーチューブが有料サービスの目玉と位置付けているのが、無料版では視聴できない独自コンテンツの配信だ。
ハリウッドや民放テレビ局などと提携し映画や番組なども作成するが、同様のことは既に他社も手掛けている。
同社ならではの強みと言えば、世界中にあまたいるユーチューバーだ。

有料サービスは広告収入のみだったユーチューブにとって、新たな収益源の確保につながる。一方、広告を非表示にできる有料版会員が増えると、広告を出す価値は低下し、広告収入が落ちる可能性も高まりかねない。有料版はユーチューブにとって、「もろ刃の剣」でもある。