「カジノ法案」で日本への観光客は本当に増えるのか !

「カジノ法案」で日本への観光客は本当に増えるのか
(News week 2017年01月13日)
http://www.newsweekjapan.jp/nippon/tourism/2017/01/184088.php


「カジノを含む統合型リゾート(IR)」について、よくまとめられたレポートだ。

「経済効果が大きい」「いや、ギャンブル依存が増えるだけ」と、議論をしているだけでは成果は得られない。
「本当に経済効果が大きいのか」、その理由は? 負の経済効果は考えられているのだろうか?
「ギャンブル依存が増える」、日本人がカジノに入場するのは入場料を高くしたり、依存症の人は入場できない制限するようだが、それでも問題が発生するのだろうか?
「マフィアや暴力団の温床を作る」、ラスベガスやシンガポールのような組織を排除するクリーンな仕組みはできないのか?
個々の問題をしっかり検証してから導入に踏み切れば良い。
今年は「実施法」についての議論の年である。議論を公開しながら結論を導いてほしいものだ。


【ポイント】
2016年12月15日、「カジノ法案」とも呼ばれるIR推進法案が成立した。
「経済効果が大きい」「いや、ギャンブル依存が増えるだけ」と賛否両論だ。
日本のIRのモデルとされるシンガポールで有名な高級リゾートホテル「マリーナ・ベイ・サンズ」では、床面積が全体の5%に過ぎないカジノ施設が利益の大半を生み出している。

推進派が言うように、日本への観光客が増えるのだろうか。
法案の正式名称は「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(略称「IR推進法案」)だ。
特定複合観光施設とは「カジノ施設及び会議場施設、レクリエーション施設、展示施設、宿泊施設その他の観光の振興に寄与すると認められる施設が一体となっている施設であって、民間事業者が設置及び運営をするもの」と規定されている。
IR法案の成立によって、国は「特定複合観光施設区域の整備を推進する責務」を負うこととなった。今後、カジノ設置やギャンブル依存症対策などの法整備を進めなければならない。

IR法案を推進してきた国際観光産業振興議員連盟は
「IR」が観光立国と地方創生を推進する』「カジノはあくまで脇役にすぎない。その目的は日本の『観光立国』化にあり、それによって日本経済の持続的な成長を可能にすることにある」、IR推進法の目的はMICE誘致のための施設であると主張する。
(MICEとはMeetiing(会議・研修・セミナー)、Incentive Tour(報奨旅行・招待旅行)、ConventionまたはConference(大会・学会・国際会議)、Exhibition(展示会)の頭文字をとった言葉)

国際会議の開催件数は、2015年統計で日本は世界3位、アジア・オセアニア1位であるが、「現在は中国や韓国、シンガポールという国々での国際会議が急速に増えており、日本が徐々に競り負けるようになってきている」 日本の存在感低下は、MICE招致に欠かせない大型の会議場や展示場の不足だ。
これらの施設は維持費がかさむため単体では採算が取れない。そこでカジノや劇場を併設することで利益をあげて維持費を捻出する。
シンガポールの象徴ともなった統合リゾートホテル「マリーナ・ベイ・サンズ」で、カジノ施設が占める床面積は全体の5%に過ぎないが、利益の大半を生み出している。

カジノへの抵抗感が強いのは、ギャンブル依存症患者の増加や治安の悪化に対する懸念が主な要因となっている。
反対派が取り上げる事例の代表格は、韓国唯一の自国民向けカジノ、カンウォンランドだ。
質屋と消費者金融が立ち並ぶ、荒廃した街の姿が紹介されてきた。

競馬、競艇、競輪、オートレース、パチンコ、宝くじと、日本はある意味で『ギャンブル大国』だ。
パチンコやパチスロを計算に入れると、世界のギャンブル機器の6割は日本に存在しているという。
ラスベガスやシンガポールなどでは啓蒙活動や治療支援などの依存症対策がとられてきたが、日本では体系的な対策は皆無。
カジノ解禁を機にパチンコなど既存のギャンブルのユーザーを視野に入れた対策を導入するべきだと訴えている。

大和総研の試算によると、カジノは年間1兆9800億円の経済波及効果が予測されるという。
付加価値誘発額は1兆1400億円、GDPの0.2%に相当する(「IR構想の実現がもたらす経済波及効果」『週刊金融財政事情』、2016年12月19日)。
(この試算は日本で3カ所のIRが開業し、シンガポール並みの収益をあげたことを前提としている)

不安を助長するのがマカオ、シンガポールのカジノ売り上げの低迷だ。
カジノ売り上げ世界一のマカオだが、2013年をピークに減少に転じた。2015年の売り上げは290億ドル、前年比34%と激減だった。
背景は中国経済の低迷と、習近平総書記の反汚職運動だ。大口の中国人VIP客の減少が売り上げ減少につながった。
日本のIRのモデルとされるシンガポールも、2010年の解禁以来カジノは売り上げを伸ばし続けてきたが、2015年は前年比13%減の約50億9000万ドルにまで落ち込んでいる。

IR推進法案が成立したとはいえ、具体的な計画と法整備は今後の課題だ。
商用観光客が増え大きな経済効果が得られるのか、それともギャンブル依存症患者の増加と治安の悪化をもたらすのか。いずれにせよ日本の観光に影響を与えるのは必至だろう。
採決の段階にいたってから「審議が尽くされていない」と嘆くのではなく、現段階から冷静に得失を見極めることが求められている。