『文化財のレッドクロス 〜瀕死の文化財を救う仕組み〜』 (講演概要)

『文化財のレッドクロス 〜瀕死の文化財を救う仕組み〜』 (講演概要)
(平成29年3月15日 参加者数:33名)


 

 

 

 

今回は、元京都市観光政策監の清水宏一さまに『文化財のレッドクロス 〜瀕死の文化財を救う仕組み〜』ついて語っていただきました。 

清水宏一さまが、観光政策監としてやられた仕事は、京都市の観光客5千万人にする構想を持ち、実際に観光客を5千万人に増やしたことで、“京都の奇跡”と言われたといいます。
当時、観光は物見遊山のように思われていましたが、産業としての観光に取り組まれました。国にも働きかけ、産業統計に観光の分類ができたことも大きかった。観光庁の設置にも寄与したとも語られました。成功の要因は、当時の桝本市長などのリーダーシップが大きく、京都市が全国に先駆けて観光統計に取り組み、観光を可視化した積み重ねが大きかったそうです。
成功の秘訣は「戦略」「宣言」「宣伝」「先鞭」と四つの“セン”です。

当時、大学に観光学部がなかったので、京都の全大学に観光学部を作ってくれと交渉されましたが、なかなか設置が認められない中、平安女学院大学が創ってくれることになり、退職後、大学教授になったエピソードなども語られました。
京都市の取り組みが凄いのは、ビルの高さ制限を下げたこと。看板の撤去(屋外広告物条例)。四条通の歩道拡幅です。この歩道拡幅では、商店街の売り上げが倍になったといいます。
これからの観光は「量から質」に転換する必要がある。京都市は2014年と2015年にアメリカの旅行雑誌に連続世界1位に輝いたが、2016年は順位が6位に下がった。理由は「混雑している」だった。VIPへの対応が大事だと語られました。

保津川下りやトロッコ列車で有名は亀岡市の専務理事になられた頃は、亀岡市の河川敷にサッカースタジアムを作って大型バスの駐車場としてパーク&ライドにする構想に取り組まれました。
サッカーをしていない時のスタジアムの稼働率を上げるためにも素晴らしい発想です。

その昔、京都市が「古都税」を導入しようとした時に寺院は観光を拒否し、大変な問題になりました。それも稲盛さんが中に立ち解決させましたが、寺院としても入場料が入らないので運営にも支障をきたしたようです。
京都の弱点の一つに“文化財保護”があります。多数の文化財の補修に回せるお金もなく、老朽化が進んでいます。昔は寄進者、篤志家、檀家、そしてお布施や賽銭で補修の費用も賄われてきましたが、今は賽銭でさえ集まりません。
1998年に稲盛和夫さんとともにデジタルアーカイブの京都宣言を行いました。“人間は、大地と人々の記憶に歴史と文化を刻んできました”に始まり、高らかに ”新しい文化と地の大地の創造”を謳いあげたと言います。

このときの精神を元に、“社会貢献”と“観光”を軸に基金を集め“文化財保護”の構想を思いついたそうです。そしてメビウスの輪のように無限に続く仕組みにこれから取り組むとの決意を表明されました。
京都の世界遺産の仁和寺に無料Wi-Fiを設置して、観光客がスマホでログインすると、仁和寺の歴史や文化財の情報が日本語・英語・中国語で配信するシステムで、広告収入を文化財保護のため仁和寺に還元する実証実験を行うそうです。緊急時は、避難場所情報を母国語で表示するという優れものです。
この構想が、総務省の『ICT活性化大賞2016』の奨励賞を受賞したともいいます。
この構想は、観光客、寺社、企業、投資家にとって四方良しだといいます。これまで起こった問題やこれからの課題などエピソードも交えながら、愉快で、志に満ちたお話でした。

そして、「人生は一度きり、悔いなく生きよう」と今日の講演を締めくくられました。