スペインんおバルセロナ市が「観光客削減」に踏み切る事情!

バルセロナが「観光客削減」に踏み切る事情 〜世界屈指の観光都市が抱える悩み〜
(東洋経済オンライン 2017年03月25日)
http://toyokeizai.net/articles/-/164660


バルセロナの年間観光客数は約3200万人と、同市の人口160万人の約20倍にも上るといい、観光客による騒音問題など、市民生活に支障が出ているという。
2015年にコラウ市長は、「バルセロナをきれいな街に再生させる」と宣言し、今後1~2年間は、観光に関連した商業施設の開設や、建物の建設を認可しないと決定し、ホテル建設も認めなかった。
本レポートでは、「スペインの観光業はGDP12%を担っている重要な産業であり、なかでも屈指の観光都市であるバルセロナが観光業に「後ろ向き」となれば、スペイン全体への影響も少なからず出てくる」との批判的な意見が書かれている。
しかし、市民生活を犠牲にしてまで観光にシフトするのは行き過ぎであり、観光と市民生活の両立のための模索が始まったのだといえる。
日本も2020年に訪日外国人観光客4000万人を目指しているが、その多数が京都を訪れることとなり、市民生活と観光のバランスを求める時期がもう目の前に迫っているといえる。


【ポイント】
1992年のバルセロナオリンピックを機に、バルセロナ市が主導して観光都市として発展するために必要なインフラ整備などを行った結果、スペイン随一の観光都市となった。建築家アントニオ・ガウディの未完の大作である「サグラダファミリア」だけでも年間320万人もの観光客が訪れている。
そのバルセロナが「観光客削減」に乗り出している。

バルセロナ市は「2020年に向けた観光都市計画」を発表。
観光客の宿泊を目的としたマンションの固定資産税を引き上げる。
宿泊を目的としたマンションの新たな認可をやめる考えを明らかにした。
ベッド・アンド・ブレックファスト(B&B)への規制も強化し、年間貸し出せる部屋を制限するという。
バルセロナでは、2016年10月から1年間、歴史地区での新たな商業施設等の開設を禁止しているほか、2017年1月末には市議会で2019年以降新たなホテルの建設を禁止する法律が可決されている。

バルセロナの年間観光客数は約3200万人と、同市の人口(160万人)の約20倍にも上る。
バルセロナで訪問者が必ず訪れるランブラ通りには1年間に延べ1億人が通行している。そのうち21%が地元の住人で、残り79%は観光客。
平日で、1日に20万人が通行しているというのだから、混雑を通り越している。

ポブレ・ノウ地区は、7万人が住んでいるが、ホテルのベッド総数は2万にも上る。
グラシア地区では、観光客用に提供しているマンションが1万5000戸もある。

市民約6000人を対象に「困っている問題」について尋ねたところ、「観光客の多さ」と答えた人の割合は約8%と、1位の「失業」(24.9%)に次いだ。
バルセロナを訪れる観光客の58%も「観光客が多すぎる」と考えている。

弊害の1つは「騒音問題」。民泊により、品行の悪い外国人観光客の存在が目立つようになった。
「朝までどんちゃん騒ぎが続き眠れない」「エレベーターの濫用で頻繁に故障するため、維持費がバカにならない」
「宿泊用」マンションが増え、一般市民向けのマンションが不足して賃貸料が上昇。2015年には、賃料を23%も引き上げるマンションもあった。

2015年にコラウ市長(43)は、「バルセロナをきれいな街に再生させる」と宣言し、今後1~2年間は、観光に関連した商業施設の開設や、建物の建設を認可しないと決定。
歴史地区では、観光客にも人気が高いバルセロナの大聖堂とその周辺地区では、バルやカフェテリア、自転車のレンタルショップ、24時間スーパーなどの開設が禁止された。

賛否両論となっているのが、新規ホテルの建設制限だ。コラウ市長就任後、2015年7月から2017年7月まで新たなホテルの建設は抑えられていた。
「観光都市戦略に沿う形でホテルの建設を進めたい」というのが理由だが、これに対してホテル業界は大反対。
すでに38のホテル建設プロジェクトが中止となり、これにより30億ユーロ(3750億円)の投資と数千人の雇用が水の泡と化した。
この中には、高級ホテル「フォーシーズンズ」も入っていたが、バルセロナ市長の決定が不服で撤退を決めたという。
ホテルの新設制限は今年7月には解除される見通しだが、それでも2年間もホテルを新設できなかった痛手は大きい。

「観光客削減計画」で最も懸念されるのは、経済への影響だ。
観光収入はバルセロナのGDPの14%を担うほか、12万人の雇用につながっており、同産業が後退することに関連業界は猛反発している。

バルセロナでは、2012年から5つ星ホテルに宿泊する場合は2ユーロ、4つ星が1.25ユーロ、それ以外のホテルで0.75ユーロ徴収しており、これによる同市の収入は年間約8600万ユーロ(108億円)に上った。
2015年からガウディが手掛けたグエル公園も、入場料として7ユーロを徴収するようになっている。
財政難にあえぐ自治体が多い中で、こうした収入は貴重な財源となっている。