ロンドン五輪に学ぶ、「文化の五輪」で地方の活性化の実現!

「文化の五輪」で地方元気に ロンドン大会に学ぶコツ 
(日経電子版 2017/4/6)
http://style.nikkei.com/article/DGXMZO14406140T20C17A3000000?channel=DF280920161012

 

オリンピックは大きな国際イベントだが、一過性のイベントに過ぎない。そうするなかで、10万件、20万件という伝統行事や文化行事を紹介する取り組みは素晴らしい。 
ロンドンオリンピックでは、全国各地の地域社会が参加するため延べ11万7000件の文化イベントが提供され、国民の参加意識を高めた!
東京でも、全国の様々な祭りなど20万件近いイベントを集めたいという。
東京に伝統行事や文化行事を集める取り組みとともに、地方を訪れるという繋がりを作る意気込みが欲しい。
【ポイント】
2020年東京五輪・パラリンピックの成功に欠かせない要素のひとつに、世界に向けた日本の文化の発信がある。
五輪憲章は開催都市に文化イベントの開催を義務づけており、開催国では4年間にわたって多彩なイベントを継続的に開く「カルチュラル(文化)オリンピアード」が展開される。
12年ロンドン大会で文化オリンピアードのディレクターを務めたルース・マッケンジー氏と東京大会組織委員会の文化分野などを担当する文化・教育委員会の青柳正規委員長(前文化庁長官)に文化イベントの役割について話し合ってもらった。

スポンサーやアーティストとのパートナーシップを築き、オペラなどの芸術を提示するには、3~5年前から計画しなければ不可能だ。
就任当初「このままではひどいことになってしまう」との思いで努力した結果、ロンドン大会の文化オリンピアードは良い評価を得られた。
日本の地方は過疎化や高齢化が進み、厳しい状況だ。
竹下内閣が「ふるさと創生事業」により地方を元気づけようとしたが、ほとんどうまくいっていない。経済だけ活性化しようとしたからだ。
地域の人たちが誇りにしている文化を活性化すれば、地域の人たちはそこに住むことに自信が持てるようになる。
東京大会を通じて全国の津々浦々までが参加するという気持ちで、お祭りなどの文化を活性化すれば、日本の将来は可能性が開ける。

ロンドン大会で、延べ11万7000件の文化イベントが提供され、国民の参加意識を高めた。
全国各地の地域社会が参加するので、できるだけ多くの数字を達成したいという考えた。国を挙げて祝福をする大切なイベントだからだ。
芸術としての品質も大切。重要なのは品質であって、数ではない。ロンドン大会の反省点でもある。

東京大会はオールジャパンで、できるだけ多くの人に参加してもらう方針。
芸術的なクオリティーは別にして、お祭りなど20万件近いイベントを集めたい。
文化庁などが各地で文化プログラムの説明をすると、参加の意思を表明するところも出てきている。
例えば、能登のキリコ祭り。能登半島の先端にある石川県珠洲市では7月から10月までに50以上の祭りがある。「キリコ」と呼ばれる大きな灯篭(とうろう)や山車が出て、出来栄えを競い合う。こうした活動に地域の人たちは一生懸命だ。地域の祭りも20年に向けて大人数が見ることのできるイベントとして磨き上げて参加してもらえれば、20万件の枠も夢ではない。文化は地域おこしに有効なのだから、どんどん進めたい。

英国にはすばらしく、美しい場所があることを世界に発信したかった。観光客にロンドン以外の地域にも行ってもらいたかった。
英国北部には古代ローマの皇帝が建てた「ハドリアヌスの長城」がある。ちょうどイングランドとスコットランドの間だ。英国南西部には、巨石遺跡群「ストーンヘンジ」もある。ここも観光客に人気がある場所だ。
ストーンヘンジでは大会期間中にはフランス人アーティストを招いて、遺跡を火で彩るイベントが開催された。
普段は火を使うことが許可されないが大会期間中は許された。こうした文化イベントを通じて、英国全体でインスピレーションを示すことができた。
その効果もあって12年以降、英国全体で観光客の数は25%も増えた。

文化庁が「文化情報プラットフォーム」という情報のホームページをつくる。ここに各地の文化イベントに関する情報を集める。
ここに誰もがアクセスできて、いつ、どこでイベントが実施されているのかを分かるようにしたい。
そのサイトのコンテンツ制作を、今後、地域の大学などに働きかけていく。
大学生の多くはスマートフォンを持っているので、動画や写真を使って、祭りなどの特徴を発信してもらいたい。
そのイベントの評価も入れた情報を集め、プラットフォームに投げ込んでいけば、20年には、約1300年前に作られた「風土記」の平成版ができる。
これは日本にとっても、海外から日本を訪れる観光客にとってもガイドブックになるし、文化プログラムのレガシー(遺産)にもなる。

大会が始まれば、誰も文化に興味を持たなくなる。むしろ、アーティストも含めて大会期間中はスポーツに集中してもらいたい。
大会が始まる直前は世界中の人々が日本を見ている。
そこでは見せびらかすぐらいのつもりで、日本の文化芸術を示してほしい。
アーティストはそれまで見たこともないような芸術で人々を驚かせることができる。そんな新しい作品を歓迎したい。

障害者アーティストの支援はロンドン大会で大成功したもののひとつ。
アーティストの創作活動を後押しする「アンリミテッド」というプログラムを展開した。
アーティストが野心的に活動することを促し、才能あるアーティストの能力を一段と高めていく取り組みになった。
その結果、ロンドン・パラリンピックの開会式でパフォーマンスを披露して大会を盛り上げるのに貢献したアーティストもいる。
ロンドン大会から5年たった今も、このプログラムは進行中だ。
この要素は16年のリオデジャネイロ大会にも取り入れられ、20年東京大会でも導入されている。
日本で障害者アーティストの才能や能力を高める取り組みがあるのは喜ばしい。

障害者らによる「アールブリュット(生の芸術)」の芸術は注目が高まっている。
障害者アーティストの支援は、いかにして健常者と障害者がシームレスな社会をつくるかが目標。それを実現したい。