岐阜県の観光戦略の取り組み 〜本気で観光、頑張りますか?〜

5月20日、日本観光研究学会主催の「関西から観光立国・立圏を考える」意見交換会に参加し、
岐阜県観光交流局・プロデューサーの古田菜穂子の取り組みをお聞きした。
古田さまとは、奈良市であった南都銀行主催の「観光力創造塾」(2014年3月19日)でお話をお聞きしており、
当時の議事録に詳しく認めているので、当時の資料をお送りしたい。
岐阜県の取り組みは、「新たな観光資源を発掘し、それらと従来の観光資源をつなぎ、観光客が求める宿泊滞在型旅スタイル造成を地域とともに行いながら、同時に国内外へのプロモーションを実施する」とあります。
誰しも同じような言葉を使われますが、具体的に地域に話を持っていくと、総論的に賛成が得られても「私たちにはできない」「この地域ではできない」など、できない理由がたくさん出てきて、理解を得るのに苦労します。古田さんは、岐阜県の自治体や観光協会を一箇所ずつ理解を得るために回られ、具体的に動き出すまで2年ほどをようしたと言います。
最近ではDMOの議論で、「どのような枠組みにすれば効果が出るのか」など組織論の話をよく聞きますが、古田さまのように、この苦労を乗り越えないと何も実現できないのだと思います。
「新しい観光資源を発掘し、観光資源をつなぐ」話は、岐阜県のような地域の取り組みに過ぎないと思われる方もおられると思いますが、大阪や京都でも同じだと思います。従来の観光スポットを紹介するだけでは現在の観光客の胸には刺さりません。
私たちは、大阪など関西圏でも、新しい観光素材を発掘し、それらをつなぎ、新しい観光商品にしなければならないと考えます。
昨日の意見交換会でも古田さんへの質問が集中していました。
2014年3月19日の議事録が出てまいりましたので、皆様にもご紹介させていただきます。
【講演内容】
自己紹介にかえて
・  雑誌編集者をしながら映画を作るための活動をした。
・  雑誌も映画もプロモーションをする原点は同じ、観光戦略も同じだ。
・  知事より直接、観光交流推進局長の依頼を受けたが、当初は民間人の私が100%公務員になるのは到底無理だとお断りをしたが、知事の戦略への明解なビジョンと、岐阜県への深い想い、観光戦略を実現するためには、全庁的な取り組みが必要だが、組織の連携のためには外部人材の登用が必要であるということ、さらに、「初の女性登用」ということで、仕事をする女性みなを勇気づける今後のためにもぜひ、受けてほしいとの強いお言葉を受け、引き受けることとした。
・  地域資源を見つけてブラシアップして観光資源とすることから取り組んだ。
・  最初は数値目標にとらわれずに取り組み、最終段階で数値目標を持つこととした。

なぜ宝ものを見つけ出すのか?

プロジェクトの進め方
・  これまで、例えば「ふるさとの誇りづくり」は教育委、「まちづくり支援、移住定住推進」は総合企画部、県産品ブランド推進」は商工、「食」は農政と、別々の部署で取り組んでいたが、それらをつなぎ、全庁的な組織で取り組む体制を作った。
・  同時に県下の市町村も一体的に取り組むこととし、理解を得るため何度も市町村を訪れた。
・  当時、国内外でも、白川郷と高山が同じ岐阜県にあることを知らない方もいた。
・  INとOUTを一体とした戦略を立てることとした。
・  新たな雇用や地域づくりにつながり、ビジネスに資する事業にすることとした。
・  優秀な職員を集め、当面、出来る限り人事異動を行わない体制とした。

岐阜の宝もの認定プロジェクト
・  「すでに有名な観光地以外で、私がおすすめする岐阜の宝もの」を募集した。なかには「我が家の窓から見える夕陽」というような回答もあったが、徹底的に集め、県内外から1811件の宝もの候補が集まった。それらを徹底的に調査し、今後の観光振興に資する「じまんの原石」を56件選定し、全国に通用する「岐阜の宝もの」5件、それに次ぐ「明日の宝もの」11件を認定した。
・  岐阜県には白川郷や高山など、点の観光スポットはあったが、近隣の隠れたスポットは知られていなかった。この「宝もの」探しにより、観光部署の職員でも知らない新たな観光スポットも浮き上がってきた。
・  この認定は、政治的なしがらみを越えた、県内外の客観的なさまざまな立場で審査できる方々を審査員とし、認定された宝もののブラッシュアップに集中投資することとした。
・  宝もの第一号に選ばれた「小坂の滝巡り」は、プロフェッショナルガイドの養成などをはじめ、滝という自然資源の観光資源化にあらゆる角度から取組み、下呂温泉とも結びつけることにより、20年から23年の間にガイド利用の来訪者は1.7倍になった。
「女性限定ツアー」「小坂時間で優しい自分に出会う旅」「御岳山に薪を運ぶエコツアー」「冬の滝巡り」などを実施した。
・  これまで粛々と環境や安全を守ってきたNPOから、「安全ばかり守るのでなく、いかに楽しんでもらうかが大切だね」と言ってもらえた。
・  「清流といえば岐阜」というようなブランディングにしようと声を掛け合った。
・  明日の宝ものに選ばれている、岐阜市内の川原町、金華山界隈では着地型観光資源の開発の為の、「長良川おんぱく」を開催した。100のプログラムにこだわり若者も頑張ってくれた。
・  例えば長良川の鵜飼の時期以外の船の活用をめさした「舞子カフェ舟」プログラムなども実施。同時に、新たな「舞子養成プロジェクト」も支援し、短大で英文科に通う女子大生が希望したので、英語ができる舞子として養成していった。
・  岐阜県の東濃地方には、地歌舞伎に取り組んでいる地域と芝居小屋があり、その数は実は日本一で、それら「文化資源」の「観光資源化」にも取り組んだ。活動している方は、注目を浴びることにより意欲が向上して行った。
・  地域の「料理コンテスト」を実施した。単なるコンテストでなく、選んだものは地域の食材を活用し、必ず商品化する精神で取り組んだ。新しい食べ方の提案。エコにこだわる食のあり方も考えた。
・  地域が主導した「国内外向け着地型観光商品」を作り出した。

国内外へのプロモーション展開
・  ターゲットとブランディングに合致した国内外メディアと直接コンタクトをとり、徹底的にアプローチし、担当者と仲良くなることを心掛けた。
・  パンフ類の写真やデザインのトーンを統一した。これまで観光、商工、農政などが、バラバラに写真やデザインを使用し、統一感が無かったものを一新した。
・  また、写真は使用可能な写真サイトを開設し、使用をオープンにした。(商業利用は別)
・  パンフやポスター、ウェブの他言語化(英、仏、タイ、インドネシア、ハングル、繁体字、簡体字、etc)に取り組んだ。
・  中国版HPやツイッターにも取り組み、職員も毎日、中国語や英語で情報発信した。
・  国によって好みがちがうので、国別に観光パンフを作成した。
・  カフェスタイルの観光セミナーなど新しいスタイルのアプローチも行った。
・  若者向けHPやFacebookにもこだわった。特に若い女性をターゲットにした。
・  海外旅行博には毎年継続して出店し、岐阜ブランドの創出にこだわった。
・  これまでに無いルートも開発した。「地歌舞伎体験ツアー」などは、百貨店友の会向けに開発して、完売するなど好評を博した。

アジアに特化した誘客事業
・  岐阜県の観光予算は他都市と比較しても少なかったので、選択と集中せざるを得なかった。2009年にアジアに集中することを決定した。
・  シンガポールがアジアの中心になので、シンガポールに拠点を設け、観光だけでなく、食、モノ三位一体でプロモーションを行うパッケージブランド戦略を展開した。
・  旅行博以外にも、飛騨牛フェアー、地酒フェアーなど、徹底的に岐阜県が知られるプロモーションを行い、フェア終了後も現地での各商品の取り扱いがあるように事前に働きかけた。
・  モノを売る時に岐阜(地域)の話を語ってもらうように働きかけた。この話が物語を作り、付加価値となる。結果として飛騨牛の知名度もアップした。
・  シンガポールで飛騨牛取扱店が3店舗あり、岐阜の知名度は上位にある。
・  シンガポールからの誘客は、2009年の3倍以上で2012年宿泊者数は全国9位、伸び率は全国2位(1位は沖縄)になった。
・  2012年宿泊者数は、タイで全国10位、マレーシアで全国12位と、他のアジア圏でも上位となった。
・  飛騨牛などの影響もあり、「岐阜は高い」と認識されている。それでもラグジュアリー層が岐阜にあこがれを持つに至っている。
・  岐阜県だけでは表品力に弱い点があるので、中部地方としての旅行商品も作った。レンタカーを利用しやすい商品。NEXCO中日本のETCと連携したサービス開発も行った。

ここから会場への設問

観光を見つめ直す
・  日常生活のなかで「ホスピタリティ」を実践していますか?
・  自分の故郷に対して常にポジティブな言葉を使っていますか? ネガティブな言葉を使っていませんか?
・  自分の故郷の、良いところ、良いモノ、良いコトを100の言葉で表現できますか?
・  あなたのおすすめの旅を想像し、作り上げてください。

さて,その上で…
・  何に重点にアピールするのですか?
・  地域の人、コト、モノの顔がイメージできますか?
・  地域資源の原石や輝きを見直したことがありますか?
・  海外プロモーションにおいて、いかにブランディングするか、何を売るのか、誰に向けて発信するのか、何処とつながるかを、本気で考えてみましたか?
・  旅行者の立場で観光施策をたてていますか? 自分たちの都合で、観光資源を押し売りしていませんか?
・  継続的に本気の観光プロモーションを続けられる組織の仕組みはありますか?
・  女性の力とセンスを活用していますか?
・  おもてなしにマニュアルはありません。ゆるぎない哲学がありますか?

【感想】
後半は資料のコピーだが、“観光を見つめ直す”に書かれた言葉に、この講演のテーマ「本気で観光、頑張りますか」が込められていることが分かる。
観光に対する「哲学」と「ノウハウ」の詰まった素晴らしい講演だった。