「日本遺産」日本のスピリットを訪ねる旅 訪日客を地方に送客するストーリーに!

日本遺産で地方送客へ、文化財を「ストーリー」として発信 〜文化庁は20年までに100件認定、認知度向上へ「国際フォーラム」開催も〜
(トラベルビジョン 2017年5月10日)
http://www.travelvision.jp/event/detail.php?id=77540


「日本遺産」は、地方誘客に向けた施策として、自治体などが取り上げる有形無形の文化財群を、その歴史的・文化的背景とともに1つの「ストーリー」として文化庁が認定するものになる。
「日本遺産」が、日本のスピリットを訪ねる旅になってほしいものだ。


【ポイント】 
東京大学大学院教授のロバート・キャンベル氏は、「日本の観光には特徴的な魅力と課題がある」と問題提起。魅力として「1つの国のなかで多様な自然や気候、料理、風俗などを経験できること」を挙げた一方、課題としては「行政や地域の人々の意識が縦割りになっている」と述べ、「日本遺産は1軒の歴史的建造物などではなく、1つのエリアとして地域が連携し、その背景にあるストーリーをプレゼンテーションしていかなくてはいけない」と語った。
 
日本遺産のプロデューサーも務めるファッションジャーナリストの生駒芳子氏は、「その場にアクセスするための交通手段が未整備なところが多い」「地元の人々の関心が低い」「物語が旅行者に伝わらない」「補助金がなくなる4年後も自走できるか怪しい」「複数の市町村にまたがる場合、各地域が個別に動いている」などを指摘した。
交通手段の整備については、「秘境」とされる地域も多く選ばれている日本遺産の良さを保つため、団体旅行よりも個人旅行に適した交通手段を開拓することを、地元の関心の向上に向けては市民参加型のワークショップの開催を、物語を伝えるためにはガイドとなる「語り部」の育成や、エコロジーなど現代のトピックと関連する催しの実施を提案。
日本遺産は「日本のスピリットを訪ねる旅」であり、「観光地をただピーアールすれば良いというものではない」と指摘。
奈良県の明日香村などでは歴史的景観を守るための条例が定められていることなどを紹介し「観光地化のためには無駄な看板を立てすぎない、新しく建てる建築物も瓦屋根の木造建築にするなど、美しい自然や歴史を感じられる演出も重要」と説明。加えて、「演出した物語を分かりやすく説明する案内板や、欲を言えば英語で説明できる語り部がいると良い」と述べ、旅行者の理解を促し、楽しんでもらうための工夫が必要と語った。

クラブツーリズムテーマ旅行部顧問の黒田尚嗣氏は、日本遺産の認定地域が外国人にとって魅力ある観光地になるために必要な要素を説明した。
「これまでの外国人向け旅行商品は、『日本の名所を見る』という形でピーアールをしていたが、今後は名所を『見る』のではなく、観察や体験を通じて『理解する』ツアーをめざす」
黒田氏は「私は個人的に外国人旅行者を案内する際には、熊野古道に連れて行く。熊野古道は巡礼など精神文化的な要素もあれば、日光浴や森林浴など健康的な要素もあり、それらを感じていただいてから日本の神話や神仏習合などの考えを解説した方が理解されやすい」と説明。その上で、「旅行者が自身の経験とリンクできるような案内が必要」と強調した。また、より分かりやすく案内するためには「我々も海外の文化や風習を少なからず学んでおくべき」と語った。

日本政府観光局(JNTO)理事の小堀守氏は、「日本遺産に限らず、外国人目線の情報発信や受入体制の整備などは各地で始まっている」と説明した上で、「日本遺産に選ばれた地域は、選ばれたことを喜んでいる場合ではない。早急に海外への情報発信をおこない、良いと言われたことは自信につなげ、悪い所は少しずつでも直していくべき」と主張。