日本の観光地に欠けている集客のための戦略!

日本の観光地に欠けている集客のための「戦略」とは 『観光立国の正体』
(ダイヤモンドオンライン 2017.7.3)
http://diamond.jp/articles/-/133684?utm_campaign=doleditor


著書『観光立国の正体』(著者:藻谷浩介・山田桂一郎)を紹介したレポート。
スイスのツェルマットは人口約5700人の小さな村であるが、年間約200万泊もの観光客が訪れる。その7割以上がリピーターだという。
観光産業だけが潤うだけではなく、農林漁業や商工業、一般住民までもが豊かさを実感できるような取り組みになることが重要だ。
DMO設立にあたって、地域全体で連携を取ることが重要だ。


【ポイント】
著書の要点
(1)スイスのツェルマットは、小さい村ながらも多くのリピーター数を誇る世界有数の山岳リゾートである。
  住民主体の「ブルガーゲマインデ」という組織が村役場と連携し、地域経営を支えている。
(2)北海道弟子屈町はブルガーゲマインデの理念のもとに地域経営組織を立ち上げ、再生を果たした。
(3)地域全体に大きな経済効果をもたらすには、富裕層を取り込むという視点が必要不可欠である。
  地域ならではの付加価値を持つサービスや商品を用意しなければならない。

スイスのツェルマットは人口約5700人の小さな村であるが、年間約200万泊もの観光客が訪れる。その7割以上がリピーター。
・スキーやトレッキングのコースが豊富で、雄大なアルプスの絶景を堪能できる。
・住む人々が地域に対して愛着と誇りを持ち、長い年月をかけて住みよい環境を整えてきたことにある。
・燃料を使った自動車の乗り入れ規制が行われている。自然と共生した生活を次世代に伝えたいという思いから実施している。
・住民の生活満足度を満たしていくことが、住民の表情や態度に本質的な豊かさをもたらしている。
・多くのリピーターを獲得しているのは、アルプスの絶景からなる「非日常」だけではなく、魅力的なライフスタイルを持つ「異日常」があるからである。
・生き残りをかけた「サバイバル意識」があったからこそ、スイスの観光産業は成立した。

日本の観光地は、団体の一見(いちげん)客を効率よく回していくことばかり考え、満足度やリピーターの獲得を怠ってきた。
目先の利益ばかりにとらわれて、魅力ある地域づくりに取り組んでこなかった。
個人旅行の割合が約9割を占め、インターネットなどによって情報収集が容易になり選択肢が多様化した現代においては、致命的である。
地域が持つ「本当の魅力・本当の宝」を洗いだし、観光事業者にかぎらず農林漁業や商工業、一般住民にいたるまで取り込んだ連携が不可欠。

スイスの各市町村には「ブルガーゲマインデ」という住民主体の組織が存在する。
ツェルマットの場合、ブルガーゲマインデが地域の経営方針を決める。観光局が方針にもとづいてマーケティングとブランディングを担当する。
ツェルマットの宿泊キャパシティは数十年ほとんど変わっていないにもかかわらず、地域全体の収益は伸びつづけている。
ツェルマットでは、様々な事業者が連携を取って自然を生かした体験プログラムやツアー、アクティビティを企画している。

北海道弟子屈町(てしかがちょう)は、屈斜路湖や摩周湖、川湯温泉などの観光資源を擁する、道東有数の観光地である。
しかし1990年代以降は集客に苦しみ、町内の小売販売額はピーク時の半分ほどにまで落ちこんだ。
そして「てしかがえこまち推進協議会」を立ち上げた。
地域経営組織の立ち上げにあたって、観光事業者のみを潤すような取り組みに偏ると、他の産業や住民たちの不満を買い、地域全体の連携が取れなくなってしまう。
住民が当事者意識を持って活動に参加できるよう「誰もが自慢し、誰もが誇れる町」というビジョンを掲げた。
旅行商品を扱う「株式会社ツーリズムてしかが」を行政の補助金なしで設立し、旅行ビジネスを強化させた。
雇用も創出され、初年度(2009年)で黒字化に成功した。

岐阜県飛騨市古川では、「株式会社美(ちゅ)ら地球(ぼし)」が「SATOYAMA EXPERIENCCE(里山体験)」のツアーを提供している。
麹づくりや豆腐づくりを体験する「フード&カルチャーウォーク」や、古民家に滞在する「ロングステイ」プランなどは、外国人を中心に人気を誇る。
富山県は2011年度から「とやま観光未来塾」を主催し、人材育成に力を入れている。
5年間で延べ370名の事業者が卒塾し、現役生たちとのネットワークを構築して連携を図っている。

2007年に北海道運輸局が地元の旬の食材を使った「1万円ランチ」を企画したとき、地元関係者は冷ややかな反応が多かった。
しかし、実際にやってみると予約が殺到し、大きな話題となった。
高額でも「北海道ならでは」という付加価値をもってすれば、1万円はけっして高くなかった。

重要なのは、満足度向上のための目標である。
世界中の人たちに日本を訪れたいと思わせる価値を打ち出さなければならない。