“シャッター温泉街”湯田中に外国人客を呼び寄せた「泊食分離」!

“シャッター温泉街”湯田中に外国人客を呼び寄せた「泊食分離」

(ダイヤモンドオンライン 2018.5.24)
https://diamond.jp/articles/-/170774
訪日旅行の宿泊先に「日本旅館」を選びたいが71%あるといいます。
なぜ「日本旅館」の稼働率が上がらないのか? 家族経営の小規模旅館が多く、外国人が求めるスタイルにリノベーションするのにハードルがあり、また湯治場などに集中している面もあるようです。
そのような中で、長野県山ノ内町の「WAKUWAKUやまのうち」の“シャッター通り商店街”に、外国人向けの「ビアバー&レストラン」や「カフェ」の開設の取り組みは参考になります。
【ポイント】
2017年夏の調査でも、宿泊先に「日本旅館」を選びたいが71%を占めたという。
しかし、リクルートライフスタイルによる別の調査(16年9月)で示された“実際の”宿泊先は、「中価格帯ホテル」(49%)、「高級ホテル」(33%)、「日本旅館」(24%)の順となっている。
16年の「宿泊旅行統計調査」(国交省)の客室稼働率によれば、シティーホテル78.7%、ビジネスホテル74.4%、旅館37.1%だという。さらに廃業の動きも目立ち、1980年に8万軒を超えていた旅館数が2005年には6万軒を割り込み、15年には4万軒をどうにか上回る程度となっている。
17年8月に観光庁が「泊食分離」の導入推進の方針を明らかにした。
旅館業は家族経営の小規模旅館であり、そうした宿が軒を連ねる湯治場由来の古い温泉街が多い。
温泉街では、小規模で古びてしまっている宿も多いが、飲食や娯楽の店舗の並ぶ街がすでに存在するという強みもある。
泊食分離を含めた旅館街の再生で大きな成果を挙げているのが、湯田中温泉を入り口に9つの温泉を擁する長野県山ノ内町の「WAKUWAKUやまのうち」である。
『私をスキーに連れてって』(1987年)の主な舞台は山ノ内町の志賀高原スキー場である。この映画の大ヒットをきっかけに日本中に波及したスキーブームで同町も活気に沸いたが、90年の985万人をピークに観光客は減少に向かい、2014年には459万人と、最盛期の46%にまで減少していた。
雪景色の中で野生の猿が露天風呂に浸かる、“スノーモンキー”を眺められる地獄谷野猿公苑が外国人観光客に大人気となった。11~13年の3年間で日本人はほぼ横ばいだったのに対し、外国人は3倍近くまで増え、入場者全体の28%を占めた。
八十二銀行などが出資する「ALL信州活性化ファンド」の投融資を受けて、「WAKUWAKUやまのうち」が14年4月に設立された。
まず着手したのは、湯田中温泉のメインストリートである「かえで通り」を導線とした、インバウンド観光客向け施設の整備だ。湯田中渋温泉郷は9つの温泉からなり、最奥の熊の湯温泉から県境の峠を越えると群馬県の草津温泉に至り、古くから善光寺参りの人々が逗留する湯治場として利用されてきた地域だ。
インバウンドの入り口であり、終点の鉄道駅のある湯田中温泉の再生・活性化に集中して取り組むべきだと考えた。
かえで通りの奥には、「トリップアドバイザー」による「トラベラーズチョイスアワード2015」で旅館部門の国内3位に選ばれた「一茶のこみち 美湯の宿」など、人気が高く、繁盛している日本旅館がいくつかあるが、湯田中駅からそこに至るまでの通り沿いが“シャッター通り商店街”の様相を呈しはじめていた。
旅行客、とりわけインバウンド観光客向けに必要な機能を備えた施設の整備が急務だった。
廃業した宿や店舗を持て余している人から、意欲ある若者へのバトンタッチを進め、「ビアバー&レストランHAKKO」や「CHAMISE やまのうちカフェ」を開設した。
「泊食分離」という観点でも、湯田中温泉には「華灯りの宿 加命の湯」「ZENYA」「AIBIYA」と、夕食を提供せずに外に食べに出てもらうスタイルの宿がオープンしている。
AIBIYAは元々は8部屋の小旅館で、低料金のホステルを求めるバックパッカーなども増えてきた。そうした需要に応えるため、客室部分はそのままに、厨房やお風呂などがあった1階部分には、自炊キッチンと共用スペースを広くとるなど、利便性を高めるリノベーションを行った.。
外国人利用者の昨年比が、ビアバーレストラン「HAKKO」で171%、ホステル「AIBIYA」が148%と、大きな成果が上がった。