崩れつつあるLCCの「4時間の壁」 中距離路線時代の関空はいかに戦うか?

崩れつつあるLCCの「4時間の壁」 中距離路線進出へ戦略は
(産経新聞 2018.6.4)

http://www.sankei.com/west/news/180604/wst1806040001-n1.html
航空機の性能が進化して、中長距離の飛行が可能となり、これまでLCC導入の決め手だった「4時間の壁」が崩れつつある。中長距離への飛行で、東南アジアやハワイ、欧米路線への拡張が可能になる。
関空は「4時間の壁により京よりも1時間アジアに近い」という利点を生かして、アジアのLCC便が増加し、訪日外国人客の増加とともに成長してきた。

日本航空は、新たに始めるLCCの拠点を成田空港に置く。中長距離であれば、東南アジアだけでなく、欧州や北米へは、成田のほうが短時間で飛行できるからだ。
関空には24時間離着陸可能という強みがあるが、訪日外国人向けに関西の魅力を磨かなければ、関空も関西も訪日客に見放されかねない。

【ポイント】
LCCで就航路線の目安とされていた飛行時間「4時間の壁」が崩れつつある。
航空機の進化などで中距離路線が増加し、日本の航空会社も相次ぎ参入を発表している。アジアに近く、短距離路線を前面に押し出して成長してきた関西国際空港の優位性が揺らぐ可能性も出てくる。

日本航空は5月14日、新たに中長距離国際線のLCC事業に参入すると発表した。
成田空港を拠点に欧米路線を想定するという。ANAホールディングスは傘下のピーチ・アビエーションとバニラ・エアを統合。これまで両社がやってこなかった東南アジア路線などの中距離便を就航させる考えだ。

背景には、経済成長が著しい東南アジアのLCCが近年、積極的に中長距離路線に進出していることがある。
すでにバンコクやクアラルンプールと関空間の路線を持つシンガポールのスクートとマレーシアのエアアジアXは、関空から米ホノルルまでの7時間を超える路線を昨年相次ぎ就航。スクートは同時にシンガポールまでの片道6時間超の直行便も開設。エアアジアXは、ホノルル路線をこれまでの週4便から8月には7便に増便する予定だ。
日本への定期路線は初となるベトナムのLCCベトジェットエアも、11月に関空-ハノイ路線を就航させる。

航空機の性能進化
LCCは、機内サービスを簡素化し、狭い座席で多くの乗客を収容するほか、燃費のいい小型機で、短距離を頻回往復し、1機を長時間活用することで成り立つビジネスモデルと考えられてきた。このため、快適性や航空機の性能を考え、飛行時間は4時間程度までだと考えられてきた。

スクートがホノルル路線に使用するボーイング社の787型機は300席以上、通路が2本ある中型機だ。
運用コストの4~5割が燃費だが、787の導入でこの燃費を以前より2割削減できる。機体の性能の向上が中型機でのLCCビジネスを可能にしている。また機体が大きい分、貨物収入を得られるのも中型機ならではだ。
ピーチの井上慎一CEOは、中距離路線への参入を決めた理由について、競争環境の変化と航空機の性能の変化をあげ、「できなかったことができるようになった。2025年にはやらないと勝てないという判断があった」と説明した。
同社は機体をエアバスの小型機A320に統一しているが、すでに燃費が良く航続距離も長い後継機のA320neoを発注しているほか、中型機の導入も検討していくという。

関空の優位性は
アジアを中心とした訪日外国人客の増加とともに、関空はLCC路線を取り込み成長してきた。
関空に本社をおくピーチをはじめ、19社が24都市に就航(平成30年夏ダイヤ)。LCC専用第2ターミナルも稼働する。関空がLCC誘致戦略を成功させた背景には、「東京よりも1時間アジアに近い」という地理的要因がある。LCC4時間の壁をうまく生かしてきたのだ。
日本航空は、新たに始めるLCCの拠点を成田空港に置く。中長距離であれば、東京からでも東南アジアに飛べるほか、同社が視野に入れる欧州や北米へは、成田の方が短時間で飛行できる。
ピーチも、バニラとの統合後は首都圏路線を強化する。

関空には24時間離着陸可能というLCCにとって最大の強みがある。
今後増える新たな路線も関空に誘致し、さらなる成長につなげることができるか、運営会社の手腕が問われる。