スマホアプリを活用したタクシー配車 三陣営2万6千台 訪日客の利便性を高める!

タクシー配車三つどもえ 五輪の先にライドシェア? 

(日経産業新聞 2018/5/31)
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO30091370S8A500C1X11001?channel=DF220420167262
スマホアプリを活用したタクシー配車事業が展開を見せている。
中国最大手「滴滴出行」は第一交通産業と提携、ソフトバンクも含めた連合。日本交通はトヨタ自動車と提携。国際自動車(東京・港)など6社はソニーと組んだという。
3陣営の車両数は約2万6千台。全国のタクシー車両(約23万台)の1割。都市部から活用が始まっていくようだ。
訪日客の利便性を高める狙いがあるという。
【ポイント】
スマホアプリを利用したタクシー配車事業で日本勢と海外勢の競争が過熱してきた。
中国最大手「滴滴出行」は第一交通産業と提携、ソフトバンクも含めた連合で2018年中にサービスを始める。
日本交通はトヨタ自動車と提携。
国際自動車(東京・港)など6社はソニーと組んだ。
20年の東京五輪に向けて訪日客の利便性を高める狙いだが、その先にはライドシェアの解禁もちらつく。
18年1月中旬、全国ハイヤー・タクシー連合会(全タク連)を滴滴出行の社員約30人が訪れた。
出席者は同社と提携を決めた第一交通産業の田中亮一郎社長や全タク連の会長を務める日本交通の川鍋一朗会長。滴滴の幹部は業界の重鎮の前で日本ではタクシー配車に特化する方針を表明した。
滴滴と第一交通を引き合わせたのはソフトバンクだ。第一交通は九州を地盤とするタクシー最大手。福岡に球団を持つソフトバンクとは地縁がある。ソフトバンクと滴滴の両社は18年中にも合弁会社を設立し、第一交通と連携して国内でタクシー配車を実験する予定。

ライドシェア世界大手、米ウーバーテクノロジーズは、第一交通の田中社長を個別に訪ねたことがある。
ウーバーは日本ではライドシェアを封印してタクシー配車に特化する。
全タク連が1月に出した「アクションプラン」にはウーバーや滴滴、シンガポールのグラブなど海外アプリと日本のタクシー会社が連携することが盛り込まれた。
第一交通の田中社長が「条件が合えばウーバーやグラブとも積極的に組みたい」と話す。
日本交通の川鍋氏は「日本でタクシー配車だけやってももうからない。いずれライドシェアをやる気だろう」と警戒。
日本交通が頼るのはトヨタ自動車だ。走行データの収集・分析やタクシー向けの通信端末などでトヨタと連携を強化。「交通データを海外企業に取られるのは阻止したい」とあくまで「国産アプリ」にこだわる考えだ。
両社は配車の先にあるAIタクシーを見据えてのこと。ジャパンタクシーは2~3月、トヨタやKDDI、アクセンチュアと共同でAIを活用してタクシーの需要を予測するシステムの実証実験を実施した。都内でタブレットの地図上に30分間の乗車数の予測を示し、乗務員が乗客を探しに行く仕組みだ。
実験に参加した乗務員は2月の売り上げが1日当たり前月比20.4%増えた。2月は日本交通の乗務員全体でも9.4%増だったため、売り上げの増加幅は約2.2倍だった。
経験が浅い乗務員でもベテラン顔負けの運転ができるようになる。実用化は18年度中をめざす。

グリーンキャブ(東京・新宿)や国際自動車などタクシー6社とソニーは配車サービスを開発する新会社を立ち上げる。
6社だけで1万台超と台数の規模は大きい。日本交通・トヨタやソフトバンク・ウーバー、滴滴に並ぶ第三極として注目される。
川鍋氏が会長を務める東京ハイヤー・タクシー協会の配車アプリ「スマホdeタッくん」から日本交通が17年5月に脱退。業界を代表する立場でありながら自らのアプリの普及を優先する姿勢が一部のタクシー会社には身勝手と映った。

「データが不十分であるのになぜ反対なさるのですか」。
3月13日の午前、東京・霞が関の中央合同庁舎で開かれた規制改革推進会議。議長の大田弘子氏は、三ケ森タクシー(北九州市)が提案した「日本流ライドシェア」について国土交通省に問い詰めた。有識者の間では世界の潮流や東京五輪・パラリンピック時の訪日客増を考えるとライドシェアの部分解禁はやむを得ないとの見方が広がっている。

自家用車に乗客を有料で乗せるライドシェアは日本では「白タク」として原則禁止される。国交省は「無限定に白ナンバー営業を認めるのは道路運送法の前提を崩す」と全面解禁は認めない方針だ。ただインバウンドを積極誘致する政策の日本でこの原則がいつまで堅持できるか。

配車アプリの事業化で体力を蓄え、海外勢やトヨタなどのグローバル企業とともにライドシェアやAIタクシーのあり方を模索したい。国内を基盤に成長してきたタクシー会社の間でそのような思惑が交錯しても不思議ではない。

3陣営の車両数の合計は約2万6千台。全国のタクシー車両(約23万台)の1割にすぎない。日本交通のアプリに登録する約6万3千台を加えても全体の4割だ。当面は東京などの大都市で顧客争奪戦が始まるだろうが、残りの会社がどの陣営に加わるか。事業化の成り行きを見つつ、水面下での交渉が様々に繰り広げられそうだ。