世界に広がる「うま味」 外国人に説明できますか?

世界に広がる「うま味」、でも外国人に説明できますか?

(Newsweek  2018年06月28日)
https://www.newsweekjapan.jp/nippon/season2/2018/06/216003.php
「うま味」はアミノ酸の一種であるグルタミン酸であると日本人が発見し、2002年、舌の味蕾(みらい)に「うま味」を感じる受容体があることが科学的にも実証されて、「甘味」「酸味」「塩味」「苦味」に続いて、「うま味」が認定されることになった。
和食ブームとともに「umami」は海外に広まった。
しかし、一部のアミノ酸成分を「うま味」と呼ぶとすれば、昆布やかつお節等の日本食品に限ったことではない。発酵や乾燥、塩蔵(塩漬け)のように加工され、「うま味」を含む食品や調理料は、世界中に多数存在する。
日本人だけが特殊な能力を備えているというように語るのは間違いだ。
より繊細な日本食の味を楽しんでいただけるような工夫が必要になる。
【ポイント】
日本人が発見した第5の味覚「うま味」は「umami」となり、和食ブームとともに海外に広まった。
「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されたのが2013年。それから5年の間に、日本人の伝統的な食文化は、欧米をはじめとする海外の人たちの間で注目を集め、これまで以上に楽しまれるようになった。
1908年、日本人科学者の池田菊苗博士が昆布だし汁の中から、主要な味成分として、アミノ酸の一種であるグルタミン酸を発見。「うま味」と命名した。
1913年にかつお節からイノシン酸、1957年に干し椎茸等に含まれるグアニル酸の各「うま味」成分が、日本の科学者たちによって発見された。
2002年、舌の味蕾(みらい)に「うま味」を感じる受容体があることが科学的にも実証され、「甘味」「酸味」「塩味」「苦味」に続いて、「うま味」が認定されることになった。

和食で欠かすことのできないだし汁は、昆布のグルタミン酸とかつお節のイノシン酸の「うま味」が純粋に凝縮し、相乗効果まで生み出す"うま味溶液"と呼べる象徴的な存在。
「うま味」には、舌全体に広がって唾液の分泌を促し、持続性がある。
例えば、上質なだし汁を飲んだ後、甘味、塩味、渋味、苦味等を感じ、それらの味覚が消えた後に、舌や口内に余韻のように長く残るものが「うま味」だ。

一部のアミノ酸成分の総称を「うま味」と呼ぶとすれば、これは昆布やかつお節等の日本の食品や調味料だけに限ったことではない。発酵や乾燥、塩蔵(塩漬け)のような加工が施され、その過程でグルタミン酸等の「うま味」物質が増えた食品や調理料は、世界中に多数存在する。
かつては研究者や専門家だけの間での学術的な認知だった「うま味」。2000年代になって、料理人や調理師、栄養士等を対象とするセミナーや勉強会、国際シンポジムが開催され、普及した。
舌にあるうま味レセプターこと受容体の存在が認められてから、世界の料理業界における「umami」への注目度にも変化が出てきた。さらに和食が無形文化遺産に認定されたことも追い風となり、フランスやイタリア、スペイン、北欧、イギリス等で、和食文化の啓発・啓蒙を通じて、「umami」について認識も高まった。
日本人にさえあまり知られていないが、うま味成分には、塩分を控えられる、食事の満足感が高まることで量が減る等、良い効果もあることが科学的に実証されている。
2018年の「アジアのベストレストラン50」で日本国内最高位の2位を獲得した日本料理店「傳」。ディナーの8〜9割が外国人客の予約という日も少なくない。店主の長谷川在佑さんは、「私と交流のある海外のシェフたちは、"umami”についている。ただ広い視野で見れば、”umami"の言葉は聞いたことはあるけど、何かはわからない」という。
傳のだし汁は、かつお節がベースで、昆布を使わない。かつお節のだし汁に、夏ならとうもろこし、冬ならかぶ、といった季節ごとの野菜を組み合わせた、だし汁を使っている。
「大切なことは、知識やルールというより、どのように楽しんでもらえるのか」だという。
「うま味」は世界中にあるもの。かつお節は魚のだしであり、野菜のだしも世界各国に共通のものがたくさんもある。トマトやチーズは「うま味」の塊であり、イタリア人は小さい頃から親しむ日常的な料理の中に「umami」は凝縮している。