『せとうちDMO』が語る「日本版DMO」を成功に導くポイント!

【広域連携:せとうちDMO】先駆者が語る「日本版DMO」を成功に導くポイント

(やまとごころ  2018.07.19)
https://www.yamatogokoro.jp/inbound_case/25433/
「せとうちDMO」がどのような組織かよく分かる。ここまで考えなければDMOという組織を形成することも、結果を出すこともできないのだろう。
「せとうちDMO」は、メディアや旅行会社へのPRを効果的に行うため、イギリスの旅行専門マーケティング会社「ブラックダイヤモンド」と2017年からパートナーシップを結んでいる。また、アメリカの政府観光局の経験もある「チャプターホワイト」を傘下におき、「ブラックダイヤモンド」をうまくコントロールし、最高のパフォーマンスを得たという。
インバウンドビジネスは未知の分野ではあるが、世界を見わたすとマーケティングも答えはあるのかもしれない。
【ポイント】
欧米にある観光事業組織を参考にした「日本版DMO」は、2015年頃から組織形成が進められ、2018年3月末時点で128団体が候補法人として登録、70団体が国からの指定を受けている。
観光庁は「日本版DMO」を、『地域の「稼ぐ力」を引き出すとともに地域への誇りと愛着を醸成する「観光地経営」の視点に立った観光地域づくりの舵取り役として、多様な関係者と協同しながら、明確なコンセプトに基づいた観光地域づくりを実現するための戦略を策定するとともに、戦略を着実に実施するための調整機能を備えた法人』と位置付けている。
「日本版DMO」の先進事例の、「せとうちDMO」インバウンドマーケティングアドバイザの村木智裕氏に、DMOの役割や運営ポイントについて伺った。
広島県、兵庫県、岡山県、山口県、香川県、徳島県、愛媛県という7県にまたがる広域組織である「せとうちDMO」は、2013年に前身組織である「瀬戸内ブランド推進機構」として産声をあげた。設立理由のひとつが「外国人観光客を集客するにあたり、観光マーケティングや商品開発は広域で連携して行うべき」があった。
「インバウンド客は、遠くから長距離を移動して日本に来るわけですから、基本的には周遊する。とすると、広域で取り組まないと地域として呼ぶのは難しいですし、単独でやるメリットは少ない」
2015年になって国は「日本版DMO」という制度をつくった。これに合わせる形で、瀬戸内ブランド推進機構も、一般社団法人せとうち観光推進機構と株式会社瀬戸内ブランドコーポレーションという2つの組織に発展改組し、二社を合わせてせとうちDMOとして活動している。
前者がマーケティング戦略を担い、後者が観光開発事業者への経営支援や資金支援という役割を持っている。
瀬戸内エリアの2014年の外国人延べ宿泊数は154万人泊だったが、2017年は2倍超の約340万人泊を記録。
 
「せとうちDMO」のマーケティング活動は、「基本はインバウンドに『知られていない』というところをスタート地点にしないと、焦点のズレた施策になってしまう」とした前置きをしたうえで、「人が旅をするというサイクルを分解していくと、ざっくり『知る、検討する、予約する、訪問する、シェアする』というものになる。
これを考えると、「何はなくともターゲットに知ってもらう」ことが大切。そのためマーケティング活動が欠かせない。
海外にいる人が『何人に知ってもらえれば何人がくるのか』というモデルはありません。それでは計画が立てられないから、『周知する』ことと、『そのうち何人が実際に来てくれたのか』を追って、その両輪をマーケティング活動で追っていくことが必要です。
マーケティング活動を効率的かつ効果的に行っていくには、設立まもないDMOが単体では限界もある。
特にイギリスを核となる市場のひとつとして捉えている「せとうちDMO」も、その例外ではない。
そこで村木氏は、「専門家と手を取り合っていく」という手法を採ったという。
「現地のことは、やはり現地しかわからないことが多い」 我々は「ブラックダイヤモンド」というイギリスの旅行専門マーケティング会社と2017年からパートナーシップを結んでいる。その理由は、メディアや旅行会社へのPRやエデュケーションを効果的に行うため」
海外企業をうまくコントロールし、最高のパフォーマンスを得るには、自分たちにもノウハウがないといけない。
そこで「せとうちDMO」では「ブラックダイヤモンド」の内実を把握し、上手く活用できる国内エージェントを直下においたという。「チャプターホワイト」という企業を「ブラックダイヤモンド」との橋渡し役にした。「チャプターホワイト」は、アメリカの政府観光局での経験もあるので、豊富な知識があった。
日・中・英に対応した「瀬戸内Finder」というオウンドメディアで、瀬戸内エリアの魅力を発信したり、観光情報を発信するだけでなく宿泊施設や体験型コンテンツの予約機能も備えた海外向けサイト「SETOUCHI TRIP」を運営したり、動画マーケティングや検索対策といったさまざまなデジタルマーケティングも行っている。
「単純にサイトを作って運営するだけでなく、費用対効果も出していくことが大事だ。最終的にどういった媒体が本当に効果的なのかを見定めて、精度を高めていかなければならない」という。
精度と高めるとは「動画についてはCPV(Cost Per View)、つまり1視聴にかかったお金を見ていて、タイはすごく良い数字が出ているんですが、オーストラリアは良くない。SNSマーケティングだと、アジアは良いけど、欧米はSNSだけでは足りなくて、リアルな部分でのプロモーションが欠かせない」と分析している。
「せとうちDMO」は、ほかにも「地域の稼ぐ力」を養うために、行っている施策は複数ある。その1つが、「せとうちDMOメンバーズ」という会員制度による地域事業者への事業支援だ。
「今、会員数は約800社(2018年1月取材時)ですが、そうした事業者に対してビジネス支援を行っている。ビジネスサポートにあたる『瀬戸内サロン』やプロモーションのお手伝い、あるいは『瀬戸内コンシェルジュ』という通訳サービスやモバイル決済導入支援といった多角的な業務サポートです」

そうしたサポートを「せとうちDMO」が行う理由は、「DMOがマーケティングを通して海外から人を呼び込んでも、個々のプロダクトは絶対に必要。地域に魅力ある商品がなければお金を使ってもらうことはできない、使い勝手の悪いサービスしかなかったらそこに泊まりたいと思えない。良い商品、魅力ある体験、使い勝手の良いサービス、買いたくなるお土産などが総合的に揃っていることが大切だ」ということです。
そうしたプロダクトを実際に作ったり、インフラ整備したりするのは、地域DMOや各自治体の役割である。
事業支援を考えたとき、もっとも重要なのが資金面でのサポート。そこでキーパーソンとなるのが地方銀行の存在です。「かつて、せとうちDMOを立ち上げるとき、観光収入としていくら増やしたいかということを、シンクタンクとともに試算し、3000億円を新たに生み出したいということになったが、それには1000億円程度の投資が必要だということも、同時に分かった。
地域にお金を投資するという意味で、地銀の役割は大きい。「せとうちDMO」は19の地銀に入っていただいている。
書籍『インバウンドビジネス入門講座 第3版』の冒頭の特集で弊社代表村山は、日本版DMOの必要性が叫ばれるようになった理由は、「関係者の連携不足」「データ集積・分析の不十分さ」「民間視点の欠如」大きく3つあると述べている。「せとうちDMO」はこれらをきちんと押さえているからこそ、結果が出ているといえる。