富裕層がシンガポールにお金を落とす3つの理由 日本式サービスを見直す視点!

シンガポールが富裕層を落とせる3つの理由 〜「おもてなし」をおカネに変える仕組みとは?〜

(東洋経済オンライン 2018/07/07)
https://toyokeizai.net/articles/-/228352
シンガポールの2017年の観光収入は2兆1960億円、外国人旅行者は1740万人。面積は東京23区と同程度で、人口約561万人のこの国の観光収入は大きい。
米朝首脳会談で、完璧にVIP対応した優秀なホスト国であることを、全世界に印象づけた。
シンガポールは、①空港ランキングで5年連続世界一の「チャンギ空港」があり、旅行者のストレスが少ない。②店員に売上額に応じてボーナスが入りインセンティブが働く仕組み。③支払う金額に応じて受けるサービス。など観光収入につながる戦略がある。
日本の無料サービスも悪くないが、ラグジュアリー層は、このような仕組みのほうが満足するようだ。
【ポイント】
シンガポールは「富裕層がおカネを落としていくおもてなしの手法」を知っている。
同国は6月12日の米朝首脳会談で、ホテル代など13億円のコストで優秀なホスト国(VIP対応が完璧にできる国)であることを、全世界に印象づけた。
チャンギ空港は「アジアナンバーワンのハブ空港」というブランドをドバイ空港(アラブ首長国連邦)と競っている。
「通行規制」など国民の不便を考えても、「世界のVIPをおもてなしできる国」と印象付けたのは非常に意義がある。

観光収入を見ると、同国がいかに富裕層を集めているかは一目瞭然。
2017年の観光収入は約2兆1960億円、外国人旅行者数は約1740万人。一方、日本はそれぞれ約4兆4162億円、約2869万人。
人口約561万人、面積は東京23区と同程度、GDPも神奈川県と同程度なのに、日本全体の観光収入の約半分を稼ぎ出している。

デービッド・アトキンソン氏は『新・観光立国論』のなかで観光立国を目指すうえで必要なのは「気候」「自然」「文化」「食事」という4つの要素だと指摘している。
食事はともかく、シンガポールはこれらの3つの要素で恵まれているとはお世辞にも言いがたい。
訪日外国人の旅行消費額(2018年1~3月期)を見ると、シンガポールは12位(1.2%)と小国の割に多い。

ではなぜ、シンガポールは少ない資源でこれほどの観光収入を稼いでいるのか。
それは同国のおもてなしは戦略的で計算高いからです。富裕層から稼いでいるという理由も大きいのですが、至るところにおカネが落ちる仕組みが作られており、自然とおカネが稼げるようになっている。
1.旅行者にストレスがかかりにくい

英スカイトラックス社の空港ランキングで5年連続世界一を獲得したチャンギ空港のすごさが語られている。
シンガポールは全般的にストレスがかからない。「空港にいることを楽しめる」「快適に過ごせるオペーレーション」「あえて静かな空港にする」という。アナウンスを最小限に抑えて静かな空港にして、快適度を上げるという考えです。
空港からのタクシーは、一列ではなく放射状に出ていて待ち時間を短縮しています。
配車アプリを利用すれば通常はわずか数分以内に配車されます。タクシーやライドシェアの利用料金は日本のタクシー代の半額程度です。空港から市内へも車で30分程度と、交通のアクセスがいい。
たとえ何時にチャンギ空港に着いたとしてもタクシーに乗って短時間で滞在先や訪問先に行けるので、着いた日からアクティブに経済活動ができる。
世界を飛び回る「ジェットセッター」に極めて評判がよく、「出入り口を制す者、富裕層を制す」なのです。

2.店員の「笑顔」はインセンティブで作られる

シンガポールには欧米流のチップ制度はありません。
しかし販売員などにインセンティブを与えて売上額に応じてボーナスが入る仕組みになっていることも多い。

レストランのテーブル担当も、有料の水やお酒などのボトルを熱心に勧め、アパレルなどの販売員も積極的です。
顔見知りの販売員が「WhatsApp」などのSNSで新作入荷やイベントやセールなどの案内をこまめに連絡してくれることもあります。顧客から予約を取り決済が完了したらポイントがついて店員の報酬に反映される仕組みもある。
格付けシステムもしっかりしている。空港や店舗などにタッチパネルが置かれ、簡単にサービスの評価(5段階評価など)ができる。その評価がボーナスに反映される。だから「大変満足」を押してもらうよう、店員は頑張る。
アンケート調査もしっかりしている。複雑なものだと有料になるのが一般的で、政府も大企業も、アンケートと引き換えにバウチャーを贈呈する。
3.「支払う金額に応じたサービス」を

日本は、大衆が中心のマーケティングですが、シンガポールは欧米に近く、支払う金額に応じて受けられるサービスが小刻みに決められているのが一般的。
レストランは米国のように「1.ファストフード」「2.ファストカジュアル」「3.カジュアルレストラン」「4.アッパーカジュアル(呼び名が変わる場合も)」「5.ファインダイニング」などに分類されており、客単価はしだいに高くなり、サービスや手間暇も多くなる。
日本のように、どんなレベルのお店でもウェットティッシュやお茶が無料提供されるのは珍しい。
「2.ファストカジュアル」のレストランでテーブルに置かれていたウェットティッシュを使い、会計で1組160円程度の代金を請求された。もちろん中国茶や水も有料です。
日本のように無料だとそれはそれですばらしいですが、顧客はたくさん使ってしまいがちで、店のコスト意識も低くなってしまう。
おしぼりは顧客単価が2万円程度の「5.ファインダイニング」レベルの店で香り付きで出ていました。シンガポールのサービスチャージは10%なので、無料で提供しても元は十分に取れます。シンガポールではホテルなどの高級店でリクエストをしないかぎり、出てきた記憶がありません。

「3.カジュアルレストラン」クラス以上からはテーブルごとに担当がつくのが一般的。
店員は客がオーダーしたものをしっかり覚え、違うテーブルでオーダーされた物が間違って運ばれることはない。
「アレルギーや苦手な食材がないか」「ここまでのサービスに満足しているか」の質問もこまめにしてくれる。
シンガポールにはベジタリアン、ビーガン(酪農製品も食べない絶対菜食主義者)、ハラル対応ができるレストランも数多くある。
値段設定がしっかりなされている。
評価が高い店は単価は相応となるため、「予約が何カ月も取れないレストラン」などという店はあまりない。
「1.ファストフード」「2.ファストカジュアル」の人気店は当日並ぶスタイルの場合が多いですが、それ以上のクラスでは数日前に予約をすれば取れる場合が多い。

世界中から超富裕層や多種多様な人を受け入れているシンガポールは、個別対応が本当に上手。
特に超富裕層の扱いは上手。この層は細やかだといわれる日本人の眼からみても「神経質すぎる」と感じるような人も多々います。しかしこの「手間暇」を「稼ぐ力」に変えられるのがシンガポールのタフさです。
日本もしっかりしたサービスをするなら、それに応じたおカネをどんどんとってもいいのです。2020年に開催される東京オリンピックやその後に向けて、日本もシンガポールから学べるところは多いのではないでしょうか。
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