「オーバーツーリズム問題」で先行するフィリピン・ボラカイ島とベルギーの事例!

世界の観光機関が「オーバーツーリズム対策」で先行する2事例を発表、対策前の法令違反が7割のフィリピンの事例など

(トラベルボイス 2018年9月24日)
https://www.travelvoice.jp/20180924-117419
「オーバーツーリズム」が世界的問題に広がりつつある。
世界の海外旅行人口は、1950年2500万人だったものが、2017年13億人に増加している。新興国マーケットが大幅に拡大し、中国のアウトバウンドが10年間に140.7%増となった。
フィリピン・ボラカイ島では環境汚染が広がり、今年4月から島を閉鎖しインフラ整備などが進められ、10月26日から一部閉鎖を解除されるという。
ベルギー・フランドル地方観光局では、末永くデスティネーションが繁栄するため、「量より質」、「クオリティー・デスティネーション」「住民の参画」の観光戦略を策定。特に「地元住民も、観光業の重要なステークホルダー(利害関係者)」という考え方を取り入れた。

住民の生活無くして観光の受け入れはあり得ない。持続可能な観光を目指す戦略を持たなくてはならない。

【ポイント】
WTTC(世界旅行観光ツーリズム協議会)は、「デスティネーションの資源管理(Destination Stewardship)」のセミナーを開催し、半年間の閉鎖期間を終了して訪問客の受け入れを再開するフィリピンのビーチリゾート・ボラカイ島と、「数より質」の戦略のもと、住民や旅行者の意識調査や分析を行ったベルギー・フランドル地方観光局の事例を紹介した。

世界の海外旅行人口は、1950年2500万人、1975年2億2500万人、2017年13億人に増加(UNWTO統計)。
過去10年で中国発アウトバウンド市場が140.7%増となるなど、新興国マーケットが大幅に拡大し、経済活性化などのメリットだけでなく、住民と観光客との軋轢が激化、オーバーツーリズム問題が各地に広がっている。

観光客の激増が地域にもたらすリスクとして、地域住民と観光客の対立の深刻化、旅行が不愉快な体験になる、インフラの混雑、自然や文化遺産へのダメージを挙げ、具体的対策に向けて動き出した2つの国の事例を紹介した。

◎島を閉鎖し、問題解決に挑むフィリピン・ボラカイ島
白砂のビーチが4kmに渡って続くフィリピン・ボラカイ島は、米旅行雑誌「コンデ・ナスタ・トラベラー」のビーチ・ランキングなど取り上げられて注目された。
2000年初めはまだ静かなビーチリゾートだったが、現在は各種マリン・アクティビティ業者や宿泊施設がひしめき、2017年の訪問客数は前年比16%増の200万人以上。このうち105万人超が海外客で、その7割を中国と韓国が占めている。観光収入は同14.8%増の10億ドルまで拡大した。
しかし、受け入れに必要なインフラ整備が追い付かず、違法建築やゴミがあふれ、水質が悪化。フィリピン政府は今年4月26日から6か月間、島を一時閉鎖した。
島内のホテルやリゾートのうち、建築法令などを遵守した施設は3割にとどまった。現在、フィリピン当局による道路、排水管、電力供給、港湾施設の拡張工事、官民の癒着を防止する法律や、市民によるモニタリング制度の徹底に取り組んでいる。またフィリピン観光省と民間の旅行・観光業界は、フィリピンの他の島への需要分散やビーチの美化運動を行っている。

当初予定では、今年10月26日からボラカイ島への観光客受け入れが再開されることになっているが、環境整備をしっかり完了することが何よりも求められている。

◎ベルギー・フランドル地方観光局による再定義
オーバーツーリズムによる地域崩壊の将来的なリスクを防ぐために、ベルギー・フランドル地方観光局では、2016~2020年の5か年計画を策定し、末永くデスティネーションが繁栄するためには何が必要か、議論や調査を進めてきた。
「量より質」、「クオリティー・デスティネーション」「住民の参画」を追求する観光戦略の目標を策定。
またアントワープ、ゲント、ルーベン、メッヘレン、ブルージュの計5都市で5400人の住民を対象に、ツーリズムに対する意識調査を実施。「経済的恩恵」「地元のプライド」「社会的インパクト」など計7項目について数値化した。背景は、訪れる旅行者や受け入れ業者だけでなく、「地元住民も、観光業の重要なステークホルダー(利害関係者)」という考え方だ。

重点ターゲット客層として選んだのは、旅行先の選定において、歴史や芸術、自然、言語、食、生活文化など、文化体験を重視する「カルチャー・トラベラー」と「MICE」。
この2つのプロジェクトに、5年間で7200万ユーロを投資する。
また、旅行者に「自分の成長を促すようなインパクトある体験」についてインタビューやオンライン調査を行い、大自然や歴史遺産に圧倒されたこと、地元の人との交流、一緒に旅した友人・家族との絆を再確認する、難易度の高いアクティビティで得た達成感などの体験談を1644件ほど収集。これを分析してレポートにまとめた。
旅行者が最も心を動かされた要因は「場所」で50%、次いで「人」(30%)、「行動内容」(20%)。インパクトを受けたときの感情については、「圧倒された」42%。「心を動かされた」(29%)、「絆を深めた」(25%)となった。

今後も世界的な旅行者の増加が見込まれるなか、デスティネーションとしての成功の定義を見直し、そこに近づくための行動計画を策定することが、観光産業の健全な発展に不可欠との考えを示した。
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