サンパウロ、ロサンゼルス、ロンドンにオープンした「ジャパン・ハウス」に外国人が殺到している!

外国人が殺到する「ジャパン・ハウス」の正体

(東洋経済オンライン 2018/10/31)
https://toyokeizai.net/articles/-/246249
ブラジル・サンパウロ、ロサンゼルス、ロンドンにオープンした「ジャパン・ハウス」が盛況だ。
背景は、ロビー活動と同じように「対外発信戦略(パブリック・ディプロマシー=PD)」にもとづく。
「ジャパン・ハウス」の運営はすべて現地の民間企業に委託し、一般市民に親しみやすくする狙いがあるという。
「日本を好きになってもらう」ための施設としての発信拠点は必要だ。
【ポイント】
「ジャパン・ハウス」は、日本に関する展示やショップ、図書館、飲食店などを備えた施設だ。
2017年4月にブラジル・サンパウロで開館し、同年12月にアメリカのロサンゼルス、今年6月にはイギリス・ロンドンにオープンし、来場者は、サンパウロ館に2017年4月から今年7月中旬までに92万人(当初目標13万6000人)。ロサンゼルス館は昨年12月から今年7月中旬までに6万5000人、ロンドン館は2018年6月中旬から1カ月で5万7000人が訪れており盛況だ。
 
「ジャパン・ハウス」は、外務省が日本のイメージアップを視野に始めた対外発信プロジェクトの一環で、2015~2018年度に設置・運営される予定で、計130億円強が予算計上されている。
「ジャパン・ハウス」の目的は、日本の伝統や文化、テクノロジー、食といった「世界を豊かにする日本」という魅力を発信し、海外での日本理解や共感度を向上させることにあり、外国人に日本を好きになってもらうため日本政府が開設した施設であり、「新しい日本」の発信拠点である。
全館の総合プロデューサーは、ロンドン館のデザイナーでもある原研哉氏。同氏は、1998年長野冬季オリンピックの開会式・閉会式のプログラムを手掛けた実績もある。サンパウロ館のデザイナーは、2020年東京五輪の主会場となる新国立競技場の設計を行う隈研吾氏。
外務省には「ジャパン・ハウス有識者諮問会議」が設置され、展示や運営等に対する助言を行っている。
メンバーは、デザイン、食、美術、メディア、経済、伝統芸能、科学技術に至る、各界を代表する専門家17人で構成されている。
背景には、安倍政権が「対外発信戦略(パブリック・ディプロマシー=PD)」に力を入れていることがある。
自国の海外における利益確保などのために、メディアでの情報発信や、文化・人的交流を通じ、海外における存在感やイメージの向上を目指すもの。
近年、世論が政策決定に果たす役割が増大する中、世界的にPDが外交手段として使われるようになっている。
アメリカでは、中国と韓国が広報活動や反日ロビー活動といったPDを展開し、日本のイメージは悪化していた。
安倍政権は「領土保全や歴史認識、平和主義などについての日本の歩みや主張」に「正しい」理解を得るべく、PD強化政策を打ち出した。

設置場所は、発信効果や日本との関係、地理的配分などを踏まえ選定された。
アメリカの首都ワシントンには広報文化センター、ニューヨークには日本文化センターや日米協会などがあ理、フランスにはパリ日本文化会館がある。
こうした既存施設がある都市を外して、ロンドン、ロサンゼルス、サンパウロが拠点に選ばれた。
展示やショップの内容も各拠点の関心を意識したものとしている。ロンドン館では、「燕三条金属の進化と文化」をテーマに記念行事を開催し、サンパウロ館では無印良品が出店するなど、ファッションに力点を置いているほか、展示では合気道や剣道、空手、柔道、相撲など日本の伝統スポーツに関する歴史や技術などが紹介されている。
ロサンゼルス館には、ユニークな日本製品を扱う店舗があるほか、セミナーや講演会、地域の日系コミュニティなどと連携した食のイベントなどを開催している。
ジャパン・ハウスの運営はすべて現地の民間企業に委託している。現地の民間運営により、一般市民に親しみやすくなるほか、入場料を徴収したり、館内での物販や飲食店も可能になるため、政府負担が軽減される。
また、よりその国の人の関心にマッチした展示やイベントを行うことができる。
日本政府が前面に出てしまうと、「日本が世論工作をしている」などと受け止められかねない。
日本の食文化やポップカルチャーは世界的に人気があるものの、海外における「日本」のイメージは、いまだステレオタイプであることが多い。
ジャパン・ハウスは、こうしたステレオタイプを改め、文化、食、言語、テクノロジー、歴史といった、あらゆる視点から「日本に目覚めてもらう」ことを目的としている。

「ジャパン・ハウス」は当初の3年間の予定を超えて、2019年度以降も継続運営となる可能性があるという。
本物の日本ファンを作るためには、常に新しい魅力を発信することが欠かせない。
課題になるのが、現地の人が知りたい日本と、日本が発信したい情報のギャップをいかに埋めるかである。
日本は「日本の魅力」を見直す時期にきており、世界が感じる魅力に対して、できるだけ影響力の高いコンテンツを発信することにより、これまでとは違う形で発展していく道につながるかもしれない。