なぜ日本では「観光地マーケティング」がうまく実践できないのか? 

なぜ日本では「観光地マーケティング」がうまく実践できないのか? DMOのありかたを海外と比較してみた【コラム】

(トラベルボイス 2018年12月17日)
https://www.travelvoice.jp/20181217-121778
各地のDMOでマーケティング分析は取り入れられているようだが、分析の結果、事業の集中への取捨選択ができないようだ。
日本のDMOはボトムアップ型で、海外のようなトップダウン型でなければ、方向転換は難しいと指摘している。
CMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)に人事権や予算に関する権限を持たせることが重要になる。
【ポイント】
観光地マーケティングは、欧米では2000年代には広まり、DMOの概念化につながった。日本は15年ほど遅れた。
ここ数年、国内各地でDMO創設が相次ぎ、CMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)が指名され、観光地マーケティングが各所で語られるようになった。
「マーケティング」と言いつつ、ゆるキャラに走ってみたり、手に取る人も少ないパンフレットを作り続けたり…。マーケティング分析の基本とされるSTP(セグメンテーション、ターゲッティング、ポジショニング)が、ごっそり抜けおちていたり、逆にSTPはなされていても実践につながっていなかったり、実践できていても成果指標を取得しておらず事業と成果の突き合わせができなかったり…。

観光地マーケティングが実践できない原因は「人材」に求められることが多い。
実際に、「マーケティング」を学んだ人はごくわずか。さらに、マーケティングはもともと製造業で発達した概念であり、サービス・マーケティングを学べるところは限定されます。
そのため観光地マーケティングをテーマとしたセミナーが作られ、一部の大学では専用プログラムも作られるようになってきました。また、マーケティングの経験と知識を持った人を公募して担当者に充てるという取り組みも出ている。
しかし、現状はあまり変わらない。
ウェブサイトやSNS、アプリを活用するデジタル・マーケティングを実践できているところは、極めて少ない。

何故こうなるのか? 日本と海外との意思決定システムの違いです。
マーケティングの概念はトップダウン型。STPから競争戦略を立案、実践するには、地域の魅力云々だけでなく、投入可能な人員や予算といったことも合わせて検討する必要があるからです。

インバウンドが増えていて、この成長市場の取り込みを実践するには、多額の費用と人員を投入する必要がある。
地域が投入できる費用と人員には限りがあるため、「日本人向けのパンフレット作製は止めよう」とか、「修学旅行誘致につけている人員をインバウンドに回そう」といった判断が必要となる。
こうした判断は、全体を俯瞰し、成果に対して責任と権限(予算と人事権)をもつ立場の人でなければできない。

日本の多くのDMOは、ボトムアップ型の意思決定といえます。
DMOは関係先が多いため、いろいろな声があがり、経営資源の制約については無関心で、やるべきことだけでなく、「やった方がよいこと」も盛り込まれ、全方位的なものとなりやすい。

「インバウンドも重要だが、引き続き修学旅行など団体客誘致も必要だ」とか「スマホ対応は重要だが、高齢者はスマホを使わないから、紙のパンフレットも用意しなければならない」など。
そういう要望に対して、理事クラスは強弱をつける判断ができないため、総花的に事業を認めることになりやすい。
その結果、人員や予算は分散され、差別化や集中といった戦略にはつながらないという顛末に至る。

マーケティングを実践するには、CMOに人事権や予算に関する権限を持たせることが重要になる。
それを担える人材育成も重要ですが、DMOという組織のガバナンスのあり方についても議論し、変革していかないと、観光地マーケティングの実践は難しい。