インバウンド観光は国籍や人種を超えた多様性こそ重要 マイノリティー市場の攻略を!

 

インバウンドは「マイノリティー市場」攻略を—若い英米黒人の間で高まる日本への関心
(nippon.com  2018.12.18)

https://www.nippon.com/ja/currents/d00448/
 
 
「欧米の観光客を増やしたい」との声を聞くことが多い。アジアの観光客が8割も占めるにも関わらずだ。
米国の「ミレニアル世代」7500万人のうち、有色人種は44%を占め、2045年までに半数を超えるという。
収入も高いアフリカ系アメリカ人のミレニアル世代は、米人口の約14%を占め、半数以上が35歳以下。旅行市場規模は、2011年に約480億ドルだ。
自分たちの存在がしっかり認識されることが重要と考える黒人消費者は87%で、38%が広告に黒人が起用されればその商品を買う可能性が高いと答えている。「観光で黒人が重視されない状況を変えたい」ともいう。
「真のインバウンド観光」を考えるうえで多様性こそ重要であり、白人ばかり意識したプロモーションは決して正しくない。
 
 
【ポイント】
政府は、20年までに外国人観光客数を4000万人、30年までには6000万人に増やすという目標を掲げている。
目標達成の手段として、中国や東南アジア各国に対してビザの発給要件を緩和し、海外旅行を楽しむ中間層の人口増加や円安というメリットを生かすことに成功してきた。
米コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニーの2016年NOリポートの中で、訪日外国人観光客の国別不均衡に潜在的リスクがあることや、アジアの観光客への依存度が高すぎることを指摘している。
日本政府観光局(JNTO)の特別顧問を務めるデービッド・アトキンソンは、使い古された桜のイメージばかりアピールするよりも、訪れる季節や場所によって、さまざまな体験ができることを前面に打ち出すべきだと指摘する。
日本では沖縄のビーチでスキューバダイビングを楽しめる一方で、北海道ニセコ町ではパウダースノーの斜面で思う存分スキーができる。このように多面的な魅力をPRすることで、アジア圏外からも多くの観光客を引き寄せられると言う。

一方で、多様性の対象を北米や欧州の民族・人種的マイノリティーに広げるまでには至っていない。
日本政府や民間企業のキャンペーンを見ると、白人ばかりを対象としている。
日本が真の「観光立国」を目指すなら、人口、消費能力、影響力において存在感を増す有色人種の若い世代に注目すべきだ。
米ブルッキングス研究所は、米国の「ミレニアル世代」7500万人のうち、有色人種は44%を占め、2045年までに米国の白人人口は全人口の半数を切ると推測している。アフリカ系アメリカ人、ヒスパニック系、アジア系や「マルチレイシャル」の人々が、将来、社会で大きな影響力を持つようになるだろう。
現時点のインバウンド戦略には、都市の黒人層を中心とする「ブラック・トラベル・ムーブメント」が取り込まれていない。
親世代より高い教育を受け、収入も高いアフリカ系アメリカ人のミレニアル世代は、旅行を楽しむ人が急増している。
アフリカ系は米人口の約14%を占め、半数以上が35歳以下だ。旅行市場規模は、1990年代初頭には250億ドルだったが、2011年には約480億ドルに拡大している(米マンダラ・リサーチ社調べ)。
彼らは旅行にお金を使うだけではない。ソーシャルメディアを活用して自らの旅の体験を記録し、広く共有している。
黒人コミュニティーの旅行を喚起して、観光業界で黒人が重視されない状況を変えたいという意図がある。
「トラベル・ノワール(Travel Noire)」「ブラック&アブロード(Black & Abroad)」「ノマドネス・トラベル・トライブ(Nomadness Travel Tribe)」「ブラック・トラベル・ムーブメント(Black Travel Movement)」といった黒人コミュニテイー向けのプラットフォームも生まれている。
リンクされたインスタグラムやブログを見て旅行に興味を持つ人たちが増えている。

観光PRや旅行パンフレットなどに、黒人旅行客の写真を使用するなど工夫をすることが誘致には効果的だ。
米の市場調査会社ニールセンによると、自分たちの存在がしっかりと認識されることが重要だと考える人たちは黒人消費者の87%にのぼり、38%が広告に黒人が起用されていればその商品を買う可能性が高いと答えている。
現時点では、日本に滞在する黒人たちの写真や体験談などがとても少ない。
こうしたブロガーやインフルエンサーたちには、日本で興味のある分野について自由に発信してもらうべきだ。
JNTOは日本の大自然の魅力をアピールすれば、欧米から新たな観光客を引き込めると考えている。だが、白人にはよくても、北米やヨーロッパの黒人たちは「大自然を楽しむ」ことに積極的ではない。
差別の歴史において、森の中でリンチが行われたり、自由に戸外で活動することを禁じられたりしたため、今でもアウトドア・アクティビティに良いイメージがないのだ。
多様な人種の人たちが日本を体験することで、さまざまな副産物が期待できる。文化やアートの世界でこれまでにない独創的な表現が生まれるかもしれない。新たな市場開拓の機会も一気に広がるのではないだろうか。