オーバーツーリズムと住民の「いらだち指標」を考える 鍵は観光への信頼と利益認識!

観光客の増え過ぎ問題(オーバーツーリズム)と住民の「いらだち指標」を考える ―解決のカギは観光への信頼と利益認識【コラム】

(トラベルボイス 2019年1月30日)
 
 
オーバーツーリズムの問題が顕在化して、はじめて住民意識の重要性に気づいた方が多い。
マス・ツーリズム時代、住民の生活圏への侵害は少なく、現代のローカルな観光を求めるなかで、生活圏を侵害する現象が増えている。
観光に関する住民意識を把握するだけではなく、住民との合意形成につなげていかなければなりません。
 
 
【ポイント】
観光において住民の意識調査の重要性はこれまでも頻繁に指摘されてきました。
アメリカのハワイ州やオーストラリアのクイーンズランド州など、調査している地域は多くあります。
 
マス・ツーリズム時代は、観光客と住民の行動範囲は比較的分離されていたが、近年、「本物らしい経験」を求め、よりローカルなものに興味をもつ観光客が増え、住民と観光の関係は密接したものになりました。
観光客は、ガイドブック中心の時代に比べローカル情報に簡単にアクセスできるようになりました。
民泊のように一般住宅に混じった宿泊施設が増えたことも、住民と観光客の接触を増大させています。
 
住民意識に関する研究は1970年代ごろまで遡ります。
観光開発が進むとともに弊害も明らかになるなか、住民の支持を得ることが持続可能な観光を可能にする条件です。
Doxeyの「いらだち指標」は、観光客が多くなるにつれて、住民の観光客に対する反発がひどくなります。
 
住民意識の研究において、もっとも頻繁に利用されるようになったのが、社会交換理論(Social Exchange Theory)です。観光産業による利益が高いと感じ、費用が低いと感じるほど、観光発展や観光開発への支持が高くなるという傾向が示されています。
経済的・社会的・環境的な影響というカテゴリーのなかでは、経済的な利益が最も強く影響します。
観光による経済活性化などの利益が多いと感じるほど、住民の支持につながるということです。
 
近年、オーバーツーリズムが多くの地域で問題となっています。
住民は、観光客の増加による利益をあまり感じず、費用ばかりが増えていると感じているのかもしれません。
観光に直接携わっていない住民からすると、混雑など目に見える弊害(費用)に対して、経済効果などの利益が非常に分かりにくいものとなります。
 
自治体への信頼と観光による利益認識の間には、相関関係があります。
自治体を信頼している住民ほど、観光で利益をもたらしていると感じています。自治体が観光による経済波及効果を示したとしても、住民が自治体を信頼していなければ、観光による利益認識は変わらないこともあり得ます。

観光が盛り上がりを見せる中で、住民からの観光への反発が、「オーバーツーリズム」や「観光公害」といったラベルのもと、メディアで取り上げられ、住民への配慮は今までにも増して重要になっていきます。
 
住民意識を把握するだけではなく、合意形成につなげていく必要があります。