オーバーツーリズムの影響で生まれた新たな観光政策「アンダーツーリズム」!

オーバーツーリズムの影響で生まれた新たな観光政策とは? 世界で注目される「アンダーツーリズム」の事例から【外電】

(トラベルボイス 2019年3月20日)
オーバーツーリズムが世界的に関心を集めるなか、「アンダーツーリズム」という、静かでのんびりしたところだからこそ楽しみがあるという観光が注目を集めている。
京都も混雑を嫌って日本人観光客が減っており、外国人観光客も混雑を嫌うとのアンケート結果もある。
短期的には観光収入を減らすかもしれないが、適切な受け入れ数のなかで、地元の消費拡大につながる考えが重要になる。
政府は観光を経済成長の柱の一つとしているが、ツーリズム拡大を歓迎しているのは、地元住民のわずか18.2%という。
【ポイント】
オーバーツーリズムが世界的に関心を集めるなか、こ注目を集め始めているのが「アンダーツーリズム」だ。
アンダーツーリズムでは、静かでのんびりしたところだからこそ楽しみがたくさんあり、混雑した都市よりおすすめ、とアピールしている。

かつての観光局やデスティネーション当局は、目標とする訪問客数や消費額を達成すれば満足で、地元の経済発展や地域マネジメントといった課題については、他の組織に任せたままだった。

しかしここ数年、オーバーツーリズムへの問題意識が大きくなると、デスティネーションマーケティングの手法について責任が問われるようになり、自治体の観光当局は、バルセロナやヴェネチアの二の舞にならぬよう、コントロール不能になる前にプランを策定し、訪問客数の増加をマネジメントする必要性を認識するようになった。

こうした姿勢は短期的には観光収入を減らすかもしれないが、それでも節約志向の観光客をたくさん誘致するより、限られた人数の富裕層を誘致する方が得策であり、適切な受け入れプランを提供することにより、地元の消費拡大に貢献してくれリピーターにもつながると考えるようになった。

混雑した観光地から、近隣のまだ訪問客数が少ないエリアへ、あるいはピークシーズンだけでなく他の季節に旅行需要を分散するのが目標だ、と話す関係者が増えている。
ただし旅行者を拡散するだけでは、根本的な問題解決にはならない。まだ観光客の受け入れ態勢が十分に整っておらず、住民も盛り上がっていない、あるいはオフシーズンは閑散としたままなのに、近隣の地域を対象にしたアプローチが始まってしまうケースが多いことも問題だ。

アムステルダム郊外にあるマウデン城では、自らの呼称を「アムステルダム・マウデン城」に変更した。街の中心地に滞在している旅行者にも足を運んでもらおうという戦略で、アムステルダム観光局も同城のプロモーションを行い、マウデン城の公式ウェブサイトでは、旅行者向けに「アクセスは簡単」とアピールした。しかし実際には、駐車場の数が限られており、電車やバスを使うと複数回の乗り換えが必要になるという問題もある。
スキフトがオーバーツーリズムを取り上げるようになって3年ほどだが、この数年、ツーリズムに関する様々な計画策定やマネジメントに対する旅行関係者の姿勢は、世界中で大きく変わった。オーバーツーリズム問題に直面しているバルセロナやヴェネチア、京都では問題が起きていることを認めるようになり、そこまで混雑していない他の都市でも、同じような状況を防ぐためにできることを始めている。

最近では、多くのデスティネーションが、アンダーツーリズムを目指す方針を打ち出している。
オスロが2017年から開始したキャンペーンは、パリなどの人気都市から旅行者を「避難させる」という内容。ノルウェーの首都なら、博物館は混雑なしでゆっくり楽しめるし、レストランの予約はすぐとれる、公園は広々してスペースたっぷり、という訳だ。

プエルトリコの観光産業は、2017年9月に襲来したハリケーン・マリアの被害から大幅な改善をみせている。観光当局は、カリブ海リゾートアイランドの混雑を嫌う人に、プエルトリコがおすすめだと働きかけている。
カリブ海に多くのアメリカ人客がやってくるが、大半はオールインクルーシブな料金体系のリゾートホテルで過ごし、地元の人々や地場産業との関わりはほとんどない。観光当局は、地元コミュニティとの関わりが楽しめるホテルにも一週間ほど滞在するよう促している。

京都は有名観光地であるが、日本政府観光局(JNTO)が、東京など主要ゲートウェイのもっと先へ旅行者を誘致すキャンペーンに乗り出すと、京都への旅客数が急増する事態になった。
京都の住民は、観光客の増加によって起きる交通渋滞や混雑に怒っており、これに対処するべく、スマートフォンのデータに基づく分析調査を開始した。通常、朝から午後3~4時頃までの時間帯に人が多くなることから、二条城では開園時間の変更に踏み切った。
日本政府は観光産業を経済成長の柱の一つとする政策を掲げており、2020年に「外国人客4000万人誘致」を目指している。ところが、ツーリズム拡大を歓迎しているのは、地元住民のわずか18.2%という結果だった。

国連世界観光機関(UNWTO)によると、2017年には世界の海外旅行人口は13億人に達し、2008~2009年の金融危機以降、7年連続で増加中だ。金融危機の後、多くの国が経済の失速を食い止めるべく、ツーリズムにテコ入れする戦略に転じたことが奏功。アイルランドのような小さな市場規模の国では、ツーリズムが最大産業になった。

人々の消費行動を予想するのは難しく、旅行がこれほど急激に拡大していくとは、各国政府にとっても想定外だった。政府や観光産業のリーダーたちは、いつ、どこで、どのように観光マーケティングを展開するべきか、再考を迫られている。
一方で、混雑が指摘されるアムステルダム、バルセロナ、ヴェネチア、京都でさえ、一部の人しか知らない魅力や、未開拓のルートがまだある。
これからの課題は、オーバーツーリズムを理由に受け入れを縮小することではなく、旅行者が知らない未知の、魅力たっぷりの新しい楽しみ方を広めていくことではないのだろうか。
※本記事は、米・観光専門ニュースメディア「スキフト(skift)」に掲載された同社CEO兼共同創設者ラファト・アリ(Rafat Ali)氏による英文記事を、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したもの。