ヘルシンキのターゲットを絞ったマーケティングに 日本が学ぶべき視点!

ヘルシンキにあって日本にない観光政策の視点

(東洋経済オンライン 2019/03/26)
フィンランドの首都ヘルシンキは、年間観光訪問者数の目標設定をせず、「本当のファン」になってくれる人にターゲットを絞ってマーケティング活動しているという。
数年前、クルーズ船旅行者は持続性の観点から大きな負担となりかねないとして、クルーズ船旅行者に向けたマーケティングを停止している。
日本において、訪日外国人を制限する論議は難しいが、地方への分散など真剣に考えないといけないのは間違いがない。
【ポイント】
2008年の訪日観光客数は830万人。2018年は3120万人となり4倍に増えた。
インバウンド旅行者の急激な増加は、既存のインフラに深刻な打撃を与えており、対応を迫られる当局は、増え続ける旅行者に対して、その場しのぎの施策を講じるのがやっとだ。
インバウンド観光ブームそのものが、日本文化の破壊につながりかねない。最近、浅草・浅草寺や宮島の厳島神社など、主要観光地にはあまりに多くの観光客が押し寄せるため、もとの魅力が損なわれつつある。京都などは、訪日観光客のせいで地元住民の日常生活に支障が生じている。
ヘルシンキは東京の面積の3分の1程度の規模だが、EUの「スマートツーリズム首都」1位を獲得した。(フランス・リヨンも同時優勝)。同賞は、スマートツーリズムの促進やネットワークの構築、アトラクションの強化、成功事例の共有を目的として今年から始まった。その1回目に選ばれた。
ヘルシンキが年間訪問者数の目標値を設定していないことに驚かされた。
数値を追う代わりに、都市のブランド構築に力を入れ、ヘルシンキが醸し出すイメージに共鳴する人々が自らの意思でやってくることを期待しているという。
今年は、フィンランドと日本の外交関係100周年にあたるが、ヘルシンキは2019年の活動の多くを活用し、そのブランド力をさらに強化するだろう。

サスティナブルな観光を促進する施策の1つとして、ヘルシンキはバーチャルリアリティー(VR)の「バーチャルヘルシンキ」を立ち上げた。世界のどこにいてもVRを通じてヘルシンキを体験できる。
現実世界では、世界的に著名な建築家であるアルヴァ・アールトの自宅内部を見て回れないが、バーチャルヘルシンキでは、こうした制限がなく、多くの人が経験を享受することができる。また、数百万人が参加するバーチャルコンサートなどの体験もARで実現させるという。

ヘルシンキはプロモーション戦略として、「本当のファン」になってくれる人に戦略的にターゲットを絞って、マーケティング活動を行っているのである。
数年前、ヘルシンキはクルーズ船の旅行者に向けたマーケティングを完全に停止した。クルーズ船旅行者は、持続性の観点から、世界中の都市に大きな負担となりかねないタイプの訪問者だという。

最近日本でも、日本人以外の宿泊を拒否する施設が増加している。報道によると、マナー違反が散見される旅行者の多くはクルーズ船の乗客だったという。
訪日外国人への啓蒙活動も行うこともできる。例えば、京都の寺社仏閣の混雑を緩和したければ、一部の観光旅行者を大分県の国東半島のような場所に誘導すればいい。旅行者が「スピリチュアル」な体験を求めているのであれば、こうした名所に誘導することによって、観光客を「分散」することができる。
サスティナビリティーというのは、問題が生じる前に対処しなくてはならない。今行動を起こさない限り、京都を悩ませている観光公害はほかの地方都市にも伝播することだろう。
日本が訪日観光客を継続的に惹きつけたいのであれば、手遅れになる前にサスティナビリティーの検討を始めるべきである。日本が今後何年にもわたって訪問者を魅了できるブランドを創造しない限り、現在のブームはおそらく長く続かないだろう。