中国のビジネスエリートの訪日教育旅行 子弟に学ばせたいポイント!

中国のビジネスエリートが訪日教育旅行で子弟に学ばせたいことは何か(後編)

(やまとごころ 2019年10月4日)
https://www.yamatogokoro.jp/report/34622/
記事の要旨は、訪日客数や消費額だけを語るのではなく、将来に渡って相互理解を深めるなどを目的として、「質」を高めることが重要だという点だ。
中国の最新の訪日教育旅行からみえるのは、彼らにとって「日本の価値は何か」「日本から学ぶことは何か」ということだ。日本の教育現場も、世界的視野から見直す必要があると思われる。
【ポイント】
日韓関係悪化により8月の訪日韓国客が半減するなど、近隣国ほど政治の影響を受けやすい。
もはや訪日客数や消費額だけでインバウンドを語る時代は終わったとみるべきで、重要なのは、数ではなく質である。
むしろ指摘したいのは、今年1~8月の訪日外客数の伸びがわずか3.9%増であることだ。
伸び率自体は母数が拡大すれば小さくなるとはいえ、東日本大震災の翌年以降、34.4%増(2012)、24.0%増(2013)、29.4%増(2014)、47.1%増(2015)、21.8%増(2016)、19.3%増(2017)、8.7%増(2018)と、この1、2年で明らかに伸び悩んでいる。
訪日外客の消費額の伸びは、「爆買い」が話題になった2015年こそ前年比71.5%増と驚嘆すべきものがあったが、それ以降は7.8%増(2016)、17.8%増(2017)、2.3%増(2018)と、訪日客の増加に比例して伸びていない。
訪日客数の伸びや彼らが落とす消費額だけでインバウンドを語る時代は終わった。
これからは数から質、いかにインバウンド効果を日本社会の活性化に貢献させることができるかこそ議論すべきである。
それを考えるうえで示唆に富む題材のひとつが、訪日教育旅行である。
 
心和青少年商学院は2014年に設立された「創二代(創業者の子弟)」のための私立教育機関である。
若きビジネスエリートの子弟のための後継者育成塾といったらいいだろうか。
子供たちは、普段は自分の学校に通っていて、週末や夏休みなどの長期休暇中、同学院に通う。
同学院の学びの理念は、責任、夢、感謝、人助け。ビジネスエリートになるための知識のみならず、EQ(心の知能指数:自己や他者の感情を知覚し、自己をコントロールする能力。中国語では「情商」という)や徳目も身につけるという。
両親は30~40代が多く、子供のうちから経営感覚を学ばせたいというのが入学させた理由だそうだ。
 
教育旅行の定番である工場見学は、子供も楽しめるようにお菓子工場にした。そこでは製造工程の見学を通じて安全・安心なモノづくりや「食と健康」を学ぶ。
寿司づくり体験は外国人に人気のアトラクションだが、勉強に追われがちな中国の子供たちにとって、異文化に触れつつ、自分で食事をつくって食べるという体験は貴重なものだ。浴衣の着付けもそうだが、特に茶道教室は中国の親にとって子供たちに体験させたいことのひとつだという。なぜなら、お茶の文化は本来中国から日本に伝わったものだが、むしろ日本にしっかり残っていることから、文化を大切にする意味を気づかせることができる。
農家民泊での川遊びや自分の手で収穫した野菜をホスト家族と一緒につくって夕食にするという体験も、高層ビルが林立する大都市圏に暮らす子どもたちにとってかけがえのないものである。
こうした日本に対する見方は、子供たちの親の世代が中国で最初の消費世代といわれる「80后」世代(1980年代生まれの世代)であることも大きい。彼らは一人っ子世代で教育熱心だが、自分たちの10代は受験勉強漬けで過ごすほかなかったから、自分の子供たちには、それだけではない多様な体験をさせたいという思いが強い。
中国からの訪日教育旅行で必ず訪れるスポットに組み込まれているのが、日本のリサイクル工場や防災センターだという。近年、中国では国を挙げて分別ゴミの収集に取り組んでいるが、思うように進んでいない。そのため、日本ではなぜ可能なのか関心が高いという。
また東日本大震災で、整然と秩序を維持した被災者の様子が評判になったことは中国でも知られている。自然災害の多い日本だけに、防災への取り組みは中国に比べて進んでいることを彼らは知っており、強い学びの動機になっている。
心和青少年商学院では「中国の子供たちの教育にいちばん役立つのは日本だ」と言われるそうだ。
日本には中国ではまだ少ない工場見学のような産業を学べる教育施設が充実していることもあるが、日本と中国は文化的につながっており、自分たちの「原点」を見直すことができるからだという。
創業者である親たちは子供に事業を継がせたい。そこでヒントになるのが、日本の「100年企業」の秘密なのだという。
中国側から必ず訪問地として入れてほしいと要望があるのが、パナソニックの「松下幸之助歴史館・ものづくりイズム館」だそうだ。創業100年を超えるパナソニックのものづくりのDNAに触れ、創業者である松下幸之助の生涯の軌跡を通じてその人生観や経営観を学べる場となる。
インバウンドを数や売上だけで議論するのではなく、中国の将来のエリートたちを日本に迎え入れることで相互理解を深めることは、我々にとっても意味がある。