「超富裕層向けサービス」が足りない サービス産業のあり方が問われる!

日本には「超富裕層向けサービス」が足りない

(PRESIDENT Online   2019年10月18日)
https://president.jp/articles/-/30161
日本は「よいサービスをより安く」という考えが多かったのかもしれない。
しかし人口減少からサービス産業の雇用確保も難しくなった。高サービスは、価格が高くなるシステムに転換しなければならないのだろう。
純金融資産5000万ドル(約54億円)以上の超富裕層は、世界に13万人弱存在する。富裕層のニーズにあったサービスが求められている。
ドバイが、世界の観光収入1位になった要因に、学ばなければならない。
【ポイント】
インバウンド・ビジネスは、これからの日本の数少ない“収益の見込める成長産業”の1つです。しかしインバウンド・ビジネスは、マス層と富裕層の分野で既存のパラダイムを変える必要がある。
低レベルのサービスは価格も安く、高レベルのサービスは価格も高くなるのが普通だが、日本では「よいサービスをより安く」という経営の価値観が浸透し、高レベルのサービスでも比較的安い価格で提供されている。
国内観光客の時代は、需要がある程度限られていたため、「安くて高サービス」でも十分対応可能でしたが、膨大な人口を持つ海外からの観光客を対象とした場合、「安くて高サービス」を続けていけば、許容量を超える観光客が訪れることにより、“観光公害”の発生、提供側の疲弊・不満、そして顧客満足の低下につながる。
これからは日本の就労人口は減っていくなか、サービスの担い手の確保はますます困難になる。沖縄は、17年に観光客数が過去最多の939万人となり、初めてハワイを超えた。しかし、18年に県民に観光産業で働く調査したところ、「働きたい・やや働きたい」が合計16.4%、「働きたくない・あまり働きたくない」が合計47.2%だった。
価格とサービスレベルのバランスを放置しておくと、このような事例が頻発し、インバウンド・ツーリズムは持続可能ではなくなる。
今後は、サービス従事者に過剰負担を強いない形で、低コストで効率よくサービスを提供する仕組みを工夫する必要がある。
富裕層向けの課題として、富裕層のニーズと提供サービスのミスマッチがある。
提供側が高級なサービスであると考えていても、海外の顧客にはそう受け取られていない場合がある。
こうしたミスマッチは、日本がハイコンテクスト文化であることに起因している。ハイコンテクストとは、コミュニケーションにおける文脈(コンテクスト)の共有度が高いため、あえて説明しなくてもわかりあえるということ。
日本の旅館では、宿泊客が夕方、食事などで外出している間に布団を敷いておくのが当たり前になっているが、海外の宿泊客には、なぜそのようなサービスをするのか理解できません。
富裕層向けの課題は、超富裕層向けのサービスがほとんどないことだ。
超富裕層はゆっくりとプライベートな時間が過ごせる滞在型施設と移動手段を求めているのに、日本では不十分です。超富裕層は、イギリスのコンサルの調査によれば、純金融資産5000万ドル(約54億円)以上の超富裕層は世界に13万人弱存在し、ビジネスは十分に成り立つ。
これらの課題を解決するには「よいものをより安く」という価値観が「悪」になる場合があると気づくこと。次にマーケティングして、旅行者のターゲットを明確にすること。
そのうえで、自社という「点」だけでなく、「面」で変えていくことが重要になる。
旅行客は、どこか一カ所だけに行くわけではない。さまざまな体験をする。そのため、一つの観光資源やサービスだけでなく、地域全体として、顧客にとっての価値を総合的に高めて、他の地域より魅力的にする「ビジネス・エコシステム戦略」が必要になる。
この戦略を実行し、一大観光都市を築いたのがアラブ首長国連邦のドバイ。
砂漠にある人口わずか330万人の都市が、年間1580万人(世界4位)もの観光客が訪れ、285億ドル(約3兆円)の観光収入を獲得している。都市の観光収入では、2位のニューヨーク、3位のロンドン、4位のシンガポールを抑えて1位だ。
観光には「快適な気候」「風光明媚な自然」「豊かで多様な文化」「おいしい食事」などが必要だと一般的に言われる。年間の半分は最高気温が摂氏35度を超える砂漠で、食事やお酒に制限のあるイスラム教を中心とした文化圏であるドバイは、観光立国として不利な環境と言える。しかも、人口の8割以上は外国人で、自国の労働力に頼ることも難しい。
そんなドバイが観光収入1位になることができた要因は、明確なリーダーシップの下、一貫した観光戦略を持って推進し、マーケティングの努力を継続してきたからです。
ドバイは中東において、航空トランジットの要所として旅行客を惹きつけていたが、飛行機の大型化と長距離化で、トランジットが減少するという状況に直面した。

当初、ホテルやレジャーなどの魅力的な施設を充実させたが、それだけではインバウンドは増えなかった。人の流れを活性化させることに気づいたドバイは、「世界の航空産業の中核都市」というコンセプトを打ち出す。
多岐にわたる航空機修理をワンストップで包括的に提供する戦略を採り、そのためのトレーニング施設やスペアパーツの保管センターなどを設けて、航空関連大手企業の整備本社拠点を呼び込んだ。

さらに、最速で移動できるVIPターミナルをつくったり、故障機や中古飛行機のオークションを開催するなど、航空ビジネスにまつわる人・組織を囲い込んだ。
その結果として世界一の観光収入都市になったのだ。
観光資源に恵まれた日本は、まだまだ高付加価値化の余地がある。また、ドバイでは外国人を活用しながら一定以上の品質のサービスを提供している。日本も外国人の活用も視野に入れた、持続可能なインバウンド・ビジネスを志向すべきです。