オランダ政府、オーバーツーリズムで観光戦略を転換 居住者重視!

オランダ政府、オーバーツーリズムで観光戦略を転換、「量より質」「居住者を最優先」で海外拠点を閉鎖へ

(トラベルボイス 2019年12月7日)
オランダ政府が観光戦略を大きく転換する。今後は、旅行者数よりも受け入れ地域にもたらす恩恵を重視し、海外プロモーション拠点を市場規模上位の5カ所のみにし、日本などの支局を閉鎖する。
世界の旅行人口は2030年までに現在より約5億人増え、18億人に達する見込みで、旅行者がもたらすインパクトを無視できないとして、オランダ政府は、旅行者がもたらす社会・経済的なメリット享受については、格差が広がりアンバランスな社会構造になるとして、居住者重視を打ち出したという。
【ポイント】
オランダ政府観光局(NBTC)が観光戦略を大きく転換する。
これまで誘致プロモーションを中心としてきたが、今後は旅行者数よりも受け入れ地域にもたらす恩恵を重視するプロモーションや、交通や宿泊産業のサステナビリティ徹底などを通じ、未来の時代に即したツーリズム確立を目指すもの。「2030 Perspective(2030年への展望)」と題した活動指針をまとめた。

直近では、プロモーション強化を目的とされてきた組織への民間出資比率を引き下げる。
予算も削減し、海外拠点を市場規模上位のドイツ、ベルギー、英国、フランス、北米の5カ所のみに限定し、スペイン、イタリア、日本の支局を2020年3月末で閉鎖する。閉鎖後はウェブサイトのみの情報発信となる。

オランダ議会は2018年から、オーバーツーリズムやサステナビリティなど、観光を取り巻く問題について議論された。さらにNBTCでは、旅行産業の他、オピニオンリーダー100人以上から意見を集め検討を行った。
「2030年への展望」は、官と民、旅行業内外の議論の集大成であると同時に「これは長いプロセスの始まりに過ぎず、簡単に達成できる目標ではない。地域や産業、省庁間で異なる利害関係を乗り越える努力と、協力が求められている」としている。

国連世界観光機関(UNWTO)によれば、世界の旅行人口は2030年までに現在より約5億人増の18億人に達する見込みで、旅行者がもたらすインパクトは無視できない時代が到来している。
オランダでも、2017年の外国人訪問客数(一泊以上の滞在客)は1800万人だが、2030年までに少なくとも50%増の2900万人に達すると予測。さらに増加ペースが続いた場合は4200万人になる。さらに同国の場合、人口も拡大していることから、国内旅行需要も増加している。
一方、旅行者の訪問先には偏りがあり、アムステルダム中心部や、ピークシーズンの海岸地域に集中し、2030年の訪問客数は、沿岸地域が2017年比56%増に対し、アムステルダムを除く内陸地域は31~39%増となっている。

「レジデンス・ファースト」で居住者への配慮を重視へ
NBTCでは、今後ますます人気観光地や都市で、居住者と旅行者間のあつれきが増える一方、旅行者がもたらす社会・経済的なメリット享受において、コミュニティ間の格差が広がり、非常にアンバランスな社会構造になることを危惧。ツーリズムがもたらす恩恵を最大化し、負荷を最小化するなど、問題解決には「観光地のプロモーションだけでなくマネジメントが必要。どう管理し、発展させていくかを考える時代だ」とし、「持続可能で、すべてのオランダ国民にとって恩恵ある未来型ツーリズムの実現」を2030年までの達成目標に掲げた。
これまで「旅行者」と「企業」の利害が重視され、受け入れ地域の「居住者」が軽視されていたことへの反省を踏まえ、「レジデンス・ファースト」の方針を掲げている。
ツーリズムは裾野が広く、関係者の利害が相反する局面も多いため、公的な視点から、全体の利を見極める仕組みが必要。そのため、住民の生活や環境への負のインパクトを把握する必要があり、住民とのオープンな対話がカギになるとの考えを示した。
また観光政策を決める上では、あらゆるレベル、あらゆる分野で、行政と産業界に加え、地域住民の参画を徹底。誘致する旅客についても、人数の多さではなくクオリティを重視し、受け入れ地域の繁栄や平安に貢献する客層にフォーカス。受け入れ地域側でも、有害な客層につながる宿泊施設やエンターテイメントは規制するべきとの方針だ。

オランダが2030年までの観光政策において、最優先の戦略課題に掲げた項目は5つ。
(1)バランス重視、(2)オランダ各地への需要分散、(3)交通アクセシビリティの改善、(4)排ガス削減や資源再利用などサステナビリティ対策、(5)ホスピタリティ強化だ。例えば、国内の公共交通機関を海外からもっと予約しやすくする、環境に配慮したサービスには報償を設け、そうでないものは税金を課す、職業教育や雇用条件の改善、などを挙げた。

目標達成に不可欠な3つの条件
① ツーリズムを最優先の政策と位置付けるよう提言。
政府も積極的にかかわって横断的な協力体制を構築することで、関係各者が自分の関わる特定分野だけに限らず、広い視野を持つことができるようになる。またツーリズムは幅広い分野が関わるため、相反する利害関係がある場合、公的な立場からの判断が必要としている。

② 官と民、異業種間の連携を強化すること。
現在、直面している課題は、長期的な対応が必要だったり、幅広い分野に関連していたり、調査・研究が必要な問題が多いため、これに取り組むためには、大規模な予算や資源が必要であり、地域や産業を越えた協力体制が不可欠としている。

③ 全国レベルでのデータ整備だ。
現行の各種データは部分的であったり、入手できるタイミングが遅かったりするため、地域や国が連携し、不足するデータに関する調査を実施するなどして、独立系のツーリズム・データを構築。競争力の向上や、様々な判断に役立てるべきだとしている。